大いなる旅路 [DVD]
国鉄マンの生涯をリアルに描くため、主演の三国連太郎は、実際にレールの上を走っている本物の蒸気機関車の罐を焚いている。(このシーンのために国鉄の研修所に通って機関助手の訓練を受けたそうだ。その甲斐あってブルーリボン主演男優賞を受けた)
機関車が雪崩に巻き込まれて脱線する場面は、当時の国鉄総裁の許可を得て、設定年代当時の蒸気機関車の実物を走らせ、実際に脱線転覆させている。
実に真剣に作られた映画で、鉄道ファンならば一度はご覧になった方が良いと思う。
また、10代の研修生から定年間近までを力技で演じきる三国連太郎と加藤嘉、まだ若々しく凛々しい高倉健、そして一瞬誰だかわからないくらいスマートな二枚目の梅宮辰夫と演技陣も素晴らしく、見ごたえがあるので、一般映画ファンにもおすすめできる。
朗読 日本童話名作選「でんでんむしのかなしみ」
自宅介護している病気の父親のために購入しました。
たくさんの話が入っていることと話し手さんの話し方が非常に聞きやすいので良いと思いました。
父親は、それなりの年齢のため、知らない話が多いかもしれませんが、基本的に童話ですので誰でも楽しめる内容だと思いました。
明智左馬助の恋〈下〉 (文春文庫)
本能寺の変に関し、私は単純な光秀単独犯説を採るから、変それ自体及びそれに至る状況についての著者の説とは相容れない。そのことは「信長の棺」のレビューで書いたから詳細は繰り返さない。この下巻で私が気になったのは信忠が信長の愚息とされていることだ。信忠は武田家殲滅戦で活躍し、信長が家督を譲ったほどの優秀な男というのが私の理解なのだが。変に巻き込まれた時に判断ミスがあったとしても。
しかし、著者の仮説に従って進行する本能寺の変を描く筆致は緊迫感があり、読ませる迫力がある。そして何より歴史を大きく動かす歯車の役を終えてあっという間に滅亡した明智一族の行動を、哀悼の念を込めて丁寧に記しているのには共感を覚えた。坂本城落城までを書く必要があり、そのためには左馬助が本書の主人公でなければならなかったのである。彼はまた、山崎の合戦に加わらず、安土城での留守役だったからこそ、安土城に込めた信長の、常人の発想の及ばない意図を知るのだが、それが何かは各自読んで確かめてほしい。それにしても、あの有名な論争がここに結びつくとは。著者の想像力の豊かさには唸らされる。
信長の棺〈上〉 (文春文庫)
遅咲の大型新人、小泉元首相の愛読書、本能寺の織田信長の新解釈など多くの前宣伝を思い起こしながら読み始めました。 第三者の目からみた織田信長像という手法は辻邦生の作品であった手法でそれ自体は驚きではありません。 また、熱烈な織田信長ファンでないため、新解釈といわれてもどうだか。 上下二冊を夏休みに読了したので、それだけの物語展開であったと評価しますが、下巻で丹波の女性を絡めてまとめてゆくというのは少々無理があるように思えました。
信長の棺〈下〉 (文春文庫)
本能寺の変を題材とする歴史仮想小説はあまたあるが、その中では読んでよかったと納得できる出来だと思う。少し前に雑誌で桶狭間の合戦についての特集があったが、その中でも議論百出で実際のところは今もって謎という所のようだ。本作はそもそも正式な合戦というものが無かったという設定で、本能寺の変と共に秀吉の策動が背後にあり、その秀吉の出時も藤原氏の末裔というまさかとはいえ、面白い設定になっている。歴史に興味のない人でもミステリーとして読んでもおもしろいだろう。ただ、作者が高齢(失礼!)だからではないだろうが、老人と孫のような小娘との情事の部分はやけに念入りに描かれており、ひょっとして作者の願望が炸裂したのかと失笑してしまった。この手の小説にありがちなあきれ果てるような突拍子もない設定や物語進行ではなく、こういうこともあり得たかもしれないとうならせてしまう力量はすごいと思う。本能寺の変三部作を全て読みたくなった。