日本合唱曲全集「岬の墓」團伊玖磨作品集
数ある團伊玖磨の合唱曲のなかでも「岬の墓」は屈指の名曲である。
この曲の歌詞は、船出する美しい船を岬の白い墓が見守る、という単純かつ和やかなもので、
十分ほどの演奏ながら、曲調は非常に変化に富んでいる。
男声部のやや低めで印象的なハミングのメロディから始まり、
その後は「今、過去、未来」を順に見つめるように、明瞭に曲の雰囲気が変化していく。
現代日本の合唱曲にしては古典的なクラシックらしい曲の構造を持ち、
安定感と荘重さにおいては、おそらく他の合唱曲の追随を許さないであろう。
辻氏が指揮するクロスロード・アカデミー・コーアの演奏は、人数編成は多くも少なくもないものの、
表現の豊かさと演奏の一体感において、とても素晴らしいものを聴かせてくれる。
このCDにはほかにも定番曲の「河口」も入っており、申し分ない内容と言える。
方丈記私記 (ちくま文庫)
私がこの本を買ったのは、堀田善衛さんが、方丈記の終わり近くにある、「汝、姿は聖にて、心は濁りに染めり。栖は、即ち、浄名居士の跡を汚せりといへども、保つところは、僅かに、周梨般特が行いにだに及ばず。」をどう感じたかを知りたいためであった。予想に反してこの鴨長明の言葉には、ほとんど紙数が割かれていない。ただ、「最後の拠りどころである筈の仏教までが蹴飛ばされてしまった」とだけ堀田さんは書いている。鴨長明は自分の未熟さを言ってたのだと思うが、堀田さんはそれを、仏教の限界、あるいは仏教を修行して何とかなろうという人の限界ととらえているのだろう。さらに、堀田さんにとって隠者がちっとも悟ってなんかいないのもわかりきったことなのかもしれない。
ということで、私にとっては、少々意外な本だったが、鴨長明と藤原定家の歌に関する解説は面白かった。
日本合唱曲全集 團伊玖磨作品集
「筑後川」も「海上の道」も邦人合唱曲の名曲ですが、残念ながら、最近では演奏される機会が少なくなりました。30年前にステージで歌った私にとっては、少し残念な気がしています。
どちらもとても骨太の曲で、丸山豊の詞も雄大です。歌い継がれてほしい合唱作品なのですが。
他の方の指摘の通り、確かに四半世紀前の録音ということを考えると、再録音の必要があると思います。「岬の墓」はもっと前の録音ですし。
ただ、現段階では、市販のCDは少ないので、多くのアマチュア合唱団にとって音源の確保という意味では必要なものですね。
何より、多くの人に愛され続けてきた合唱の名曲を若い世代の方に知っていただくためにも、これを是非聴いて欲しいと願っているのですが・・・・。