セルマソングス~ミュージック・フロム・ダンサー・イン・ザ・ダーク
ビョークの初主演作品ということで話題を集め、00年のカンヌ映画祭で見事グランプリに輝いたミュージカル映画のサントラ。もちろん、ビョークが音楽を手がけており、収録曲の大半は彼女とマーク・ベルの共同プロデュース。よってビョークの前作『ホモジェニック』同様、壮麗なオーケストレーションと打ち込みが巧妙に組み合わされており、テクノ/エレクトロ系の音楽ファンの耳も刺激するサントラに仕上がっている。
1〜7は、いずれもこの映画のために書き下ろされた曲。ミュージカル映画のサントラだけに、2は往年のハリウッド・ミュージカル映画の音楽を現代風にアレンジしたような曲だ。言うなれば、ビッグ・バンド・ジャズをインダストリアル・サウンドで再現したような曲で、女優のカトリーヌ・ドヌーヴも歌を披露している。続く3は、ビョークとレディオヘッドのトム・ヨークのデュエット。こちらはクラシックとエレクトロの要素を融合したナンバーで、メランコリックな雰囲気が漂っている。ちなみに2には工場の機械の音、3には機関車の汽笛の音が入っている。つまりこれらの音源はまさしくサウンドトラックで、映像を想像しながら聴くと、よりいっそう面白味が増す。無論、ビョークの歌は相変わらず変幻自在で、いたってエモーショナル。アクの強いサウンドに拮抗、あるいは凌駕している。サントラとはいえ、頭のてっぺんから爪先までビョークといった感じの秀作。そしてこのサントラを聴くと、明日にでも映画を観たい、という強烈な欲求が沸き上がってくる。
ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]
良くも悪くも一度観たら忘れられない映画でしょう。
セルマの決断は正しいのかどうかはわかりませんが、息子の為だけに生きる姿は心を打たれます。
母親が自分の子供を殺してしまうという事件が増えている今、セルマは母親の鏡のような存在に感じます。
本作のミュージカルシーンは、主人公セルマの妄想の中で展開します。
なので、現実世界で突然唄って踊るミュージカルが苦手な人も違和感無く観られるでしょう。
ミュージカルシーンでのセルマはとても魅力的でカワイイです。
そして、その魂の歌声に圧倒されることでしょう。
ダンサー・イン・ザ・ダーク【日本語吹替版】 [VHS]
病気の遺伝を知りながら子どもを産んだという事に対する贖罪の物語と見た。
キリスト教世界独特の原罪の意識、徹底した個人主義(神との契約による)を
肌で理解できない日本人には難しい映画だと思う。
主人公は母性愛ゆえに死んだのではなく、あくまでも自らの信念に殉教したのだ。
(子どもの為を思うのであれば、死を選ぶはずがない。)
その、魂の強さ、純粋さが、痛い。
彼女にとって、この結末はハッピーエンドでさえあったのだ。
松本人志のシネマ坊主
松本人志の映画批評の、というより評価の軸はとても明快で、監督のアイデアとイメージと撮りたい(表現したい)という思いがはっきりしているかどうかの一点にかかっている。だから、たとえば「結局、何が言いたいねん」ということで評価すべきではないとか、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見て泣くってことは、実はこの映画をわかっていない、基本的に狂人の映画なんです、といった珠玉の言葉がぽんぽんと飛び出してくるわけだ。映画を語る新しい言語が弾んでいる。ちょっと驚嘆した。