満潮の時刻 (新潮文庫)
静かに、しみじみと、「生きている」こと、「生きること」を見つめていく文章に引き込まれた。
解説を読むと、あの『沈黙』とほぼ同時期に書かれた作品だそうだ。
『沈黙』は、ただひたすら暗いトンネルの中を歩いていたようなイメージだったのだが、
この本を読んだ上で、改めて『沈黙』を読んでみたら、だいぶ印象が変わった。
実は、神も語りかけていたのではないか、という気がしてくるのだ。
主題は両書とも一緒だ。あわせて一冊の本にしてもおかしくない。
むしろ、あわせて読むことで、新しい発見があるのではないか、と思う。
ゆらゆら帝国 III
ゆらゆら帝国のメジャー進出後のサードアルバムは、以前に比べかなりポップ色が強く軽快な仕上がり。
じっくり聞いていると一つ一つの音がまるで頭の中でポコポコと弾けているように感じるほどに、
非常にリズミカルでアップテンポな曲が揃っている。
ジャケットの素晴らしく狂ったアートワークも、
坂本氏と同じく多摩美大出身の漫画家・しりあがり寿氏の近作を連想させ興味深い。
前作「ミーのカー」の胃の腑に響くような重厚さはないものの、
ナンセンス度合いを増した歌詞とともにシンプルでキャッチーな印象を与える良作になっている。
こういう変化を快く思わない旧来のファンもいるのだろうが、
結果的に薄味になるわけではなく洗練されスマートになっていくなら、そうそう否定するようなものでもないだろうと思う。
一聴して「以前のような暗い魅力が無くなった」と感じる向きもあるかもしれないが、
むしろ歌詞と合わせた坂本氏の悪意というかイジワル具合は増しているような気がしてならない。
特に、不自然なまでに明るい曲調で歌われる<4>の『待ち人』の歌詞は
まんま引きこもりの逃避願望を具現化しているようしか見えないのだが、俺の気の迷いだろうか?
「つぼみの中で春がくるのをじっとまっている 咲くかな まだかな」って、車で逃げる『EVIL CAR』より救いがないよ・・。
砂の城の殺人 創元推理文庫
▼あらすじ
行方不明になった父を捜すための資金稼ぎとして、
日々アルバイトに励む、高校1年生の倉西美波。
今回は「二日で五万円」で、廃墟専門カメラマン・阿賀野瑞姫の撮影助手をすることになる。
親友の直海と修矢の飼い猫であるケンゾウと共に、向かった先は、
今にも崩れ落ちそうな〈砂の城〉――瑞姫の実家である宇賀神邸。
そこで美波たちを待っていたのは、行方知れずになっていた瑞姫の母のミイラだった!!
▼感想
今回は、〈嵐の山荘〉もの。
密室殺人やアリバイトリック、意図せざる不可能状況といった正統派の道具立て
に加え、移動する死体、夜中のプールから宙に浮かぶ人影、といった怪異により、
〈館〉ものとしてのサスペンスが高められています。
ただ、登場人物が少なく、犯人の動機もはっきりしているため、
“意外な結末(犯人)”を望む読者には、退屈かもしれません。
作者の施した伏線や手がかりから、不可能状況を
推理する=〈ハウダニット〉を楽しめる人向きでしょう。
なお、本作ではケンゾウの“三毛猫ホームズ”的活躍や、
直海とかのこ、それぞれの個性が発揮された“素人探偵”
ぶりなど、レギュラーキャラに見せ場が用意されています。
(その煽りをくって、今回の修矢はやや影が薄いですが)
美波の“父親捜し”にも進展がみえた本作。
次回からは外国が舞台になるのか、これまで通り、バイト→
事件というパターンが踏襲されるのか、気になるところです。
俺の声/SION
「俺の声」に始まり「俺の声」の終わるSION15年のベスト。
独特のしわがれた声が噛みつくように、すすり泣くように、そっと抱きしめて来るようにそれぞれの時の痛みや喜びを唄う。
SIONの「声」には裸の人間の人肌のぬくもりがある。
だから、どんなにヘビーな内容の歌を唄っても、どこかに不思議なユーモアがにじむ。
人生を生きる者のおかしみと強さがにじむ。
生きてる人の肌はどんなにぺしゃんこになってもあったかいんよ。
つらくなってしまって、でももう一度自分や他人を好きになってみたい、そんな人にどうぞ。
ムーンサンド はじめてのおしろセット
子どもがほしがったので、雨の日でも砂遊びができるならと購入しました。
砂を触った感触がちょっと不思議な感じで、子どもはずっと遊んでいます。
大人もなんだか癒される感じです。
ただ、付属している型がすぐに砂となじんでしまい、すぽっと型抜きができなくなってしまうのが難点です。説明書には、砂についているワックスが型についてしまうと抜けにくくなります、その時には洗剤で洗ってください。とありますが、それが少々めんどくさいです。