春、バーニーズで [DVD]
西島秀俊なんぞ、洋画ばかり見て邦画(ドラマ)を見ないワシは知らなかったぞ。メチャ演技上手いやないかい!監督及び脚本も秀逸。セリフでの感情表現を極力抑え、さりげないない会話や、表情だけでここまで表現させた俳優、監督に拍手を贈りたいわい。音楽も危うい主人公の心の内を漂わせる感じで見事。この映画(ドラマ)の主人公の気持ちをわからない(理解)できない奴がたくさんいると思うが、もう一度人生やり直したほうがいいぞ。ちなみにワシは寺島しのぶもファンである。
7月24日通りのクリスマス [DVD]
結末は容易に想像できましたが、見終わった後なんともいいほのぼのとした気持ちでした。
大沢たかおの感情をもう少し掘り下げてほしかった気もしますが、また何度か観たい映画だと思いました。さゆりの父の店や本屋のインテリアもとても素敵でした。
パレード (幻冬舎文庫)
若い男女が共同生活をしていて、それなりに打ち解けて仲良くしているけど
それぞれが自分を演じて、決して本当の自分は見せない。
そんな住人のそれぞれの語りが、1章ずつ、ゆるゆると続きます。
私は、未来・サトルあたりで結構、退屈に感じてしまいました。
最終章の内容には、みなさん同様、驚かされましたが、「えっ、これだけ?」と
物足りなく思ってしまいました。
前振りが長く単調に感じたため、最終章が短くインパクトが弱いという印象を受けました。
解説にも書いてあった通り、もう一度読み直せば、1回目と印象が変わってくるのでしょうし、
2回3回と読んでこそ、この小説の良さを味わえるのだろうとは思うのですが、
読後感が悪く、退屈な前ふりが長かったことが影響し、もう一度読もうという気持ちになれずにいます。
悪人(下) (朝日文庫)
この小説のタイトルがなぜ「悪人」なのか?
(あくまで私なりの考えですが、)作者が描きたかったのは、社会通念上の「悪人」と「善人」の定義などではもちろんなくて、人間の「孤独」についてなのではないでしょうか。あくまで「孤独」の隠喩としての「悪人」なのだと思います。「善人」は「孤独」ではないですからね。
小説のスタイルとしてはオムニバス形式とでも呼ぶべきでしょうか、祐一と光代という2人の中心人物はいますが、主役は節ごとに入れ替わり、さまざまな人物の心象風景が描かれます。その複数の登場人物がみなそれぞれに孤独であり…。「人間という生き物は、みな孤独なんだなあ」と読後は切なくなるわけです。
下巻はいよいよ祐一と光代の愛の逃避行がメインになりますが、特に灯台の近くの小屋に隠れているときの2人が好きですね。孤独な魂と魂が愛し合うような、そんな恋愛小説的な部分が小説中で唯一、純粋で美しいパートになっているわけです。
パレード (初回限定生産) [DVD]
過去、吉田修一作品の映像化はことごとく原作レイプだったので
(『東京湾景』しかり『7月24日通り』しかり)
ちょっと不安だったけど、さすがの行定勲監督!
原作の世界観を見事に表現してくれました。
吉田修一自身も手放しで褒めているようです。
役者もいい演技をしていて、
特にフワフワした琴ちゃんを可愛く演じた貫地谷しほりと
掴み所がなく胡散臭いサトルを体現していた林遣都が印象に残りました。
残念だったのはクライマックスシーンでの過剰な演出。
ピンクの車の中での核心に迫るセリフの後、あそこで雷鳴らしますかね?
そして肝となるラストシーン、泣き崩れる彼とそれを見る四人の視線、
もいちど彼を映して、その泣き声をぶったぎるように唐突に終わって欲しかった。
あんなにダメ押ししちゃダメでしょ。
原作を読んでいない人は展開に夢中になれるだろうし、
恐ろしいほどの傑作を損なっていないので既読者にもお勧めできます。
あ、あとは森下千里の安い使われ方もお楽しみ下さい(笑)