3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)
「将棋」を選ばざるを得なかった少年と、そのために父に選ばれなかった少女と。
明暗が同居する小さな家庭と、そこで人間としての暖かみを取り戻す少年と。
描写の一つ一つがとても胸を打つ。
寂しいとはなんなのか、哀しいとはなんなのか、優しいとは、嬉しいとはどういうことか。
作品全体がその問い、その答えに満ちている。
深い余韻を与えてくれる、非常に質の高い作品です。
細かい点で気になるところはあるにはありますが(主人公に対する呼び名が一貫しない点など)、つまらない減点はするべきではないですね。
というわけで、☆5つでオススメします。
ジャージの二人 [DVD]
本作は全編に渡り何も起こらず、ほのぼのした作品だ。でも退屈な時間ではない。これが中村組の本領だろう。ロックミュージシャン・鮎川誠を主演に据えて、軽井沢ロケといえば、やっぱりジョン・レノンである。「この道、レノンとオノ・ヨーコが歩いてたんだよねえ」というセリフは、嘘かマコトかはともかく、自分も飛んで行きたくなった。何せジョンが半年も住んでいたところだからね。堺雅人との親子役も非常にほのぼのとしていて、ふたりとも他の役者ではこうはいかなかっただろう。田中あさみは現代では珍しい、黒髪のしとやかタイプが多い事務所(フラーム)の所属だ。これが映画初出演ということだが、雰囲気がこの作風に合っていたと思う。ラストは「別離」というダークなもので終わるが、それも前向きな未来に思わせるところが上手い。特典ディスクもほのぼの感が一杯だ。大楠道代が「ローバジェットだけど、映画を作っている感じがする」とメイキングで語っていたが、もともと中村監督はVFXとかほとんど使わない「職人監督」だからね。舞台挨拶で「好き嫌いがハッキリする作品」と監督自ら言っていたが、自分は嫌いじゃないです。ロケ地マップが映像付きで収録されているのも、映画ファンには嬉しい特典だ。星は3つ。
東のエデン 劇場版I The King of Eden DVDスタンダード・エディション
s.a.cの神山監督オリジナル作品として期待されていたテレビシリーズが11話という窮屈な環境で消化不良になってから、さほど時間も経過していないが、記憶から薄れつつある。s.a.cは今だ待望される続編を望んで止まないというのに。
テレビシリーズ11話から半年後、再度記憶を失った滝沢朗を追ってNYへ向かう咲。そこで出会った二人は…。
まず、OPがダサイ。音楽のチョイスは勿論、アニメーションのツカミとして重要な映像表現が残念すぎる。テレビシリーズを踏襲した形ではあるが、明らかな劣化。
単館で劇場では見られない地方も多い中、当然私もその一人であったが、正直、DVDで十分だと思った。映画としての意味が全くない展開で予定調和に過ぎていく89分がただただ、退屈だった。魅力のない主人公2名が軽すぎるのも設定上仕方がないものの、他のセレソンや東のエデンメンバーも何だか色褪せて見える。特にパンツはもう少し活かせそうだっただけに惜しい。あと、juizが妙にアイデンティティーを醸し出していて気持ち悪かった。s.a.cのタチコマとは立ち位置が違うのにテレビシリーズ程度に押しとどめられなかったのか…。個人的には黒羽が正当過ぎても好きだったのだけれどw
後編も観ることになりそうだが、これだけ下がった期待値をさぁどう持ち直してくれることやら。
3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)
この作者はいったいどういう学生生活を送ってきたのだろうか?
いじめられっ子だったのだろうか
自分の意思とは無関係に、周りからの半ば強制的に孤立させられていく
これはイジメといえばイジメだが
そんな事は大人の世界でも多々あること。
棋士界でもやっかみや羨望など
後藤の揉め事として描かれる。
傷つきやすいガラスの10代だからこそ
内にこもって自分を守る事しかできない
そんな辛さを、こんなにもストレートに
プロ棋士ゆえの孤独と重ねて描けるとは
島田プロが故郷へ帰って
イチから出直す気分になったところで歌う
♪こわいながらも とおりゃんせ
という歌詞のセレクトといい
パーフェクトと言わざるをえない。
人情に厚い下町の風景の温かみも
孤独な人間にとっては空っぽな風に見える。
その感じをスカスカになる手前の略し方で描かれた背景。
素晴らし過ぎます。
ハチクロでは「恋愛」を通して人間を描いた作者は
今作では「孤独からの再生(?もしくは脱出)」をテーマに
ゆっくりと長い時間をかけて物語を進めるようです。
結末は分からないが
編集部の都合に巻き込まれず
「ハチクロ」のようにベストな着地点での
作品の終了を望みます。
とはいえ、まだまだ長く続きそうですが。
泣いた。
何度も涙がこぼれた。
人は、おてんとうさまを目指せば
こわいものは何もない。