暗黒神話・餓鬼の章 [VHS]
何という忠実で誠実で上質なアニメ化だろうか。
キャラクターデザインをみたときは原作そのままのグダグダな絵(ほめ言葉)に不安になったが杞憂だった。前後編併せて一時間半の「見事な作品」が現れた。どこもすばらしいが、餓鬼の動きとその強さは恐怖である。諸星世界を愛すると自認する方ならこの作品だけはなんとしても見ておかないと。こんな名作がDVD化もされず、このまま消えていくのはあまりに惜しい。たまらずレビューを書いてしまいました。あなたが、武ほどの時間をかけることなくこの豊かな作品を体験できますように。
壁男 [DVD]
ジャンルはホラー映画ですが内容はホラーではありません。なので壁からお化けが出てきて…みたいな恐怖を期待して観るとワケの分からないモノになってしまう場合があるので注意。いわゆる、監督の裏メッセージ映画です。 『壁男』という何かがいる、という新たなホラーブームが起こり、さてその壁男とは何ものなのかと正体を探るメディアと主人公。これを視聴者も一緒に探していくことになりますが、少しシュールなストーリー展開にその答えを見つけることが出来なければ、きっと単に意味不明な映画。なのでこの映画は自分は壁男を見つけられるか?というのが一番楽しい観方なのかもしれません。ただ、会話中に出てくるヒントが露骨でしかも数多いので、難解というほどに難しくはないハズ。 壁にアイディアを持ってきてそのストーリーの組み立ては綺麗で見事。ただオチがど真ん中にすんなり入るので大絶賛はちょっと無理。
壁とメディア。お爺さんの言う「よく分からない」。難しいコメンテーター。よく分からない方はここに注目。
栞と紙魚子の怪奇事件簿 [DVD]
諸星大二郎の初めての少女向け「怪奇漫画」がドラマ化!主演はプロデューサー「丹羽多聞アンドリウ」が発掘した逸材、ボーイッシュな魅力の「南沢奈央」。アイドルグループ「AKB48」の主力メンバーで、演技力に定評がある「前田敦子」。この2人が次々に起こる「怪事件」を解決していく「コメディ・ホラー」作品。‥原作独特の「諸星ワールド」テイストを実写で忠実に再現するのは非常に困難であるし、不可能に近い。ドラマ化にあたり、あえて無謀な冒険はせずに、主演のアイドル2人の魅力を前面に出したドラマ展開に原作をアレンジしている。原作では立場は対等だが、ドラマでは「南沢・栞」がメインで物語の引っ張り役、「前田・紙魚子」は彼女に振り回される 「狂言まわし」的な役どころ。容姿、性格付けも若干、原作と異なる。原作を原案にしているが変更点も多く、二話のトイレの「ギロチン・トラップ」に襲われたのは原作では「紙魚子」だが、ドラマでは「栞」に変わっている。原作を見ながら比べてみると興味深い。これらの変更で原作の「おどろおどろしさ」は後退してしまったが、テレビならではの「エンターテイメント」性はよく出たと思う。最終回では原作にはない、「栞」に関する「大ドンデン返し」もあり(彼女達の制服姿の違いが伏線とは‥)アイドル主演のドラマとしては楽しく観れたし、「南沢奈央」・「前田敦子」のファンなら要チェックのDVD-Boxだと思います。少し変わったドラマを観たい方々にオススメです!
奇談 プレミアム・エディション [DVD]
岩手県で隠れキリシタンの大弾圧があった大籠が、地名を変えて登場します。もっとも最後のタイトルロールに岩手県大籠って出てくるからわかると思いますが、この教会の内部は45年カトリック信者をしている私も初めての経験でした。
適度な緊張感を持続できる映画ですね。私はこの映画、勢いに任せて3回連続で見ました。隠れキリシタンの弾圧を背景とした神隠しの話、そのベースにある部落差別を扱っているのですが、純粋なキリスト教関連の映画ではありません。へたな解説を一切省いているのでしょうか、それとも観客の想像に任せるとでもいうのでしょうか、ところどころ、話が飛躍しているところがあるのですが、それでもその映画独特の雰囲気は伝わっています。私自身は、こういう雰囲気の映画は大好きですね。
ちなみに、私は大籠の弾圧について詳しく研究した経緯があります。2度、大籠を訪問していろいろなところを見て回りましたが、それらの大弾圧の歴史的遺物が、教会と殉教公園以外にひとつも出てこなかったのが唯一の残念なところですね。せっかく大籠をロケ地に選んだなら、もっとそういうところをアピールすべきではないかと・・・。この映画を見た方は、是非、大籠にいらっしゃい。そしてその大弾圧の現場をその目で見るべきだと思います。ちなみに“はなれ”は大籠にはありません。念のため。