国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)
陽と陰、幸運と不運、革新と保守、未来と過去・・・。対照的すぎる2人の性格は戦国の嵐の中で思わぬ展開をとげていきます。足利幕府再興を目指し、その尊敬できない人柄を不服としながらも義昭を擁立し名をあげようとする明智光秀。道三に憧れ、美濃を引き継ぎながら、困難な戦の一つ一つを、その強運に導かれ、根気よく精力的に立ち動く織田信長。
信長みたいに自信に溢れ、自らの価値観で破壊と創造をすることができたらどんなに楽しいだろう。その欲の強さや、直情的な行動は子どものように純粋で、どんなに残虐でも憎めない。
一方、過去とのしがらみを裁てない中で、物事の機微を感じ取るあまり悩みまくる光秀はとても人間的で身近。そのもろく弱い部分は誰の心にもあるし、時々励ましに似た気持ちで読んだ。
3-4巻を通じ、クライマックスに向けての布石がそこここにちりばめられ、まるで見てきたかのように自然に納得できる...一体なぜ、それが起きたのか。
教科書では理解できない、人間の心が創り出す「歴史」を体感できます。