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光速の終盤術 (将棋連盟文庫)
谷川将棋の名作であり、終盤の定跡化・定型化が行われ始める足がかりになった
一冊と言えるでしょう。すべてにおいて文句の付けようがない。5つ星です。但し、
内容的には非常に高度なもので対象はアマ高段者以上?でしょうか。
これだけの才能と人格の持ち主が何故一時代を築けなかったか?
レビュワーが考えるに理由は意外に簡単な所にあり、「関西在住に拘ったこと」に
尽きると思います。情報戦で羽生世代に負けた。もう一つは、あまりにも早い段階
で己の手の内を明かし過ぎたこと。もう少し意地悪しても良かったのに(笑)。
しかし、この人の人柄と品性があったからこそ洗練された今の将棋界があると思えば、
名人を含むタイトル獲得実績以上に将棋界への貢献の大きい棋士であることは
間違いないと言えるでしょう。
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光速の寄せ 振り飛車編 (将棋連盟文庫)
「光速の寄せ」の「振り飛車破り」「振り飛車で勝て」の合本である。内容は非常に充実している。
特に良いのは、
1.居飛車の囲い崩しが丁寧である。だいたい「囲い崩し」の本は、「矢倉「美濃」「穴熊」であり、舟囲いや玉頭位取りの崩し方などは触れられていない。しかし、その崩し方はかなり独特であり、これがわかっていないと「振り飛車の方が囲いが堅い」という前提が崩れてしまい、定跡で振り飛車良しの変化から競り負けてしまう。
この本は、舟囲いなどの崩し方がかなり丁寧に書かれており、実戦形式からの長い手数の詰ませ方もある。振り飛車党には必要な知識である。
2.実戦譜の解説で、中終盤の方向性が書かれていること。その時の自分と相手の駒組みから、最終的な狙い筋と注意筋が書かれている。これはあいまいな形で語られる「大局観」に似た部分の説明であり、非常に参考になる。