百年小説
近代文学で有名作家の代表作品(短編)が一冊にまとめてくれたものがないか。
その願いをかなえてくれるのが本書である。1330頁に51編の名作がほぼ丸本の形で収載されている。活字が大きく、総ルビなので読み易い。
中島敦の『山月記』、太宰治の『富嶽百景』などは言うまでもなく、ややなじみの薄い坂口安吾の「波子」、梶井基次郎の「闇の絵巻」など掘り出しものも入っていて、楽しめる。
紅露逍鴎と言われた明治の文豪作品からプロレタリア文学・私小説をも含め、最後は昭和23年情死した太宰治まで広く作品を網羅して豪華な一書となっている。
セメント樽の中の手紙 (角川文庫)
本書は価格からもわかるように非常に短い作品である。
ページにして10ページ弱、読むのには10分もかからない作品である。
しかしそのような短い作品であっても、考えされることはいろいろある。
私は、この作品を読書感想文の課題図書として読んだのだが、様々な事が書けた。
是非読んで見ては、いかがでしょうか。
太陽のない街
「蟹工船」と並ぶ、プロレタリア文学の名著が、このように手軽に文庫本で読めるようになって嬉しい限りです。小林多喜二も徳永直も、日本の文学史上忘すれてはならない人物です。特に、彼らの作品は時代を超えて、不公平な社会への鋭い告発と共に、働く者たちに勇気と希望を与えるものです。本書、「太陽のない街」も、労働争議と、権力の弾圧によるその挫折を描いたものですが、困難と厳しい試練の中でも希望を見出して行こうとする「力」を感じさせる作品です。
ある意味で、格差と貧困が蔓延しつつある現代の労働環境は、「太陽のない街」と同じように暗闇が覆っているような状況です。「太陽のない街」、それはまさに現代の街の象徴です。しかし、光が暗闇の中で輝くように、この作品には、まさに暗闇の中で輝く光があります。その光が何であるのかをぜひ読み取って欲しいと思います。