JOY DIVISION (デラックス・エディション) [DVD]
ジョイ=ディヴィジョンの元メンバーである三人のインタビューには、それぞれの際立った個性が濃厚に表れている。
屈折した性格のバーナード=サムナー、豪快なピーター=フック、温和なスティーヴン=モリス。「つきあいは殺人の刑期よりも長い」というサムナーとフックの、長年にわたる確執も所々に窺える。
「今でも、死んだイアンと、それを止められなかった自分自身に対して腹が立つ」とスティーヴン=モリスが語る、怒りと悲しみの感情が、後の二人からも共通して感じられる。三人三様の言葉と表情から滲み出るイアン=カーティスへの思いと、単純な言葉では表現しきれない三人の深い関係が、ストレートに胸を打つ。
未公開のものも含めた豊富な資料映像は、ファンにとって興味深いものであることは間違いない。しかし、それだけではなく、「ジョイ=ディヴィジョンという完璧な素材をできるだけありのまま提示したかった」と監督が語るこの映画は、観る者に生きることへの問いかけを生じさせる。
レジスタンス [DVD]
観る人を選ぶ映画かも。
万人を楽しませることはできないが、なぜか、最後まで目を離せない。
それは主人公が、これからどうなるのだろう、というスリルと
時折混ぜる、女たちの性ゆえの悲劇、のせいかも。
戦争とは国と国の領土の拡張だけでなく
普通の人間が、置かれた悲惨な状況で変わっていくことを余儀なくさせる。
絵心がありながらも時代に翻弄され、やがてはスパイになる主人公。
哀れでありながらも、淡々とした、悲惨な現実を俯瞰する視線は
次への希望を見い出そうとする力になり、
観ている者の心も癒される。
戦争映画の新しい切り口かもしれない。
戦争と女性の関係はリアルで嘘がない。
そのぶんハッピーエンドで、ほっとしました。
ポストパンク・ジェネレーション 1978-1984
1978-1984の7年間、英米ロック界(一部ドイツ、オーストラリアを含む)を統括した評論・インタビュー集では過去読んだどの本よりも充実していました。
表紙のジョン・ライドン率いるPILや、録音方法にまで詳細に触れたジョイ・ディヴィジョン(映画「コントロール」でも再現されていました)、日本では取り上げられる事が少ないペル・ウブ、ここでも時代の仕掛け人たろうと足掻く業界ゴロの様なマルコム・マクラーレンや目利きらしくシーンの良い所取りをしていく才人ブライアン・イーノを始め、メジャーなU2、ニューロマンティクスから怖いノイズ・インダストリアルの分野までこの時代に結成され、活躍したバンドの多くが網羅されており、同時に単なる総覧では無く、筆者レイノルズの考えと好みも明示されています。
インディーズロックの一分野だけを取り上げたのではなく、長くて数年、短い場合は数ヶ月で移ろい行く同時代性だけでこれだけ雑多で豊穣な内容を突っ込んで取り上げた本はおそらく無いと思います。商業的成功に後一歩及ばなかった愛すべきアーティスト、意外に狭い英国業界の交友関係の記述も実に興味深かったです。
この時代にデビューしていても、スミスやREM等85年以降に全盛期を迎えるバンドはほんの触りだけ、リコメン系の重要バンド(アート・ベアーズ等)の記述が全く無いのは残念です。
筆者が重要視するアーティストはディスコグラフィーも含め一章のかなり部分を割いていますが、他のアーティストも一行でも記述が有るページは全て牽引出来る為、資料本としても最適です。
やや高額ですが金額以上の価値は充分に有ります。もしこのレベルの本が7年毎に出れば素晴らしいロック界の年代記になり、続けて購入する価値は充分に有ると思いました。記載されているアーティストとロック・ジャーナリズムに興味が有る方には文句無くお薦めです。
クローサー【コレクターズ・エディション】
1stに聞けるアマチュアパンクは、安にポストパンクとも言い難い、形容しにくい深いサウンドへと変貌をとげている。
エレクトロニクスは今の基準から言うと稚拙だが、当時としては画期的で精巧なレベルだろう。というよりそもそも稚拙さが、ぶっきらぼうで、何とも言えないオンリーな魅力を放っている気がする。
歌詞は示唆的だが抽象的に、淡々と語られる。なぜか聴いているうちに畏怖に似た感情が生まれてくる。
真夜中に、川辺でじっと静かな流れを見ているかのような音楽である。決して柔らかいわけでも、もやもやしているわけでもなく、音は硬質なのだが、なぜかそんな気がしない。
イアンがああいうことになった理由は、発作とか、成功からくる気疲れとか、女性関係とも言われるが(興味深いことに、イアンは不倫相手アニクと肉体関係を一度も持ってはいなかったという)、今もよくわからない。
結局、残ったこの音だけがすべての本質なのかもしれない。