株価暴落 (文春文庫)
池井戸潤の本は、最近になってなかなか切れが出てきたように思う。この「株価暴落」は、経営状態がおもわしくないワンマン経営のスーパーの大手チェーン店が、爆弾魔による脅迫を受け、株価が暴落し、さらに経営が傾いていくというストーリー。その容疑者と目される少年、スーパー、スーパーのメインバンク、警察と、それぞれの立場からシンクロするように描写が進む。さすが金融に明るい著者だけにそのあたりの描写が細かいのが個人的には嬉しい。とはいえ、誰にでも楽しめるスピード感のある小説である。
オレたち花のバブル組 (文春文庫)
オレたちバブル入行組 (文春文庫)を読んだのち、本作が文庫本になるのを待ちかねてました。
池井戸潤さんらしい、テンポの良い作品です。
銀行はバブル期に大量に新入社員を雇ったわけだが、バブルがはじけた今、そのバブル入行組は厳しい生存競争の中にいる。自分がいなくても替わりはいくらでもいるのである。競争を勝ち抜くために、やられたら倍返し、派閥の壁を破壊していく主人公は頼もしい。しかし、主人公たちも気づいているように、競争に勝ち残ったとしても、銀行組織のなかで生きていくことには変わりがないのである。
捨雛ノ川―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
シリーズ18作目。
佐々木道場にまつわるエピソードが中心の本作。道場下からの刀剣の出土、
師範本多の縁談等。話は当シリーズの典型的なパターンでひねりが乏しいのも
確かだが、ここもと込み入った話が多かったため、逆に王道的な展開は、一服
の清涼剤のような爽快感があった。
玉木宏樹の大冗談音楽会!!
玉木さんは日本の人だから、”ウィアード”アル・ヤンコビックのように英語がわからないと冗談もわからない、ってことはありません。まして、玉木さんは「しゃべるバイオリン」を奏でる超絶技巧のユニークなバイオリニストでもあります。だから、ユーモアとアイデアは満載です。
でも、いまいち笑えませんでした。確かに幾つか面白い曲もあります。レビューにある6曲目は面白かったです。4曲目もばかばかしかった。でも、それで終わっちゃいました。ゲラゲラでもクスクスでもなく、アハハという乾いた笑い。そして沈黙。
ただ単に玉木さんと私のユーモアのセンスが合わないだけかもしれません。でも間違いないのは、人を笑わせるにはパンチが足りないこと。これはみんな共通の感想だと思います。スパイク・ジョーンズやシティー・スリッカーズ、クレイジー・キャッツのようなジャズメンとは違った笑い。クラシック畑の笑いはちょっと敷居が高いのかもしれませんね。
救いは、5曲目「バイオリンのための大江戸捜査網」。時代劇ファンは必聴ですよ。ホルンを軸にした、あの雄大な曲がバイオリンで奏でられるとどうなるか。これは聴いてのお楽しみ。いずれにせよ、マニア向けです。本当に冗談音楽は難しい・・・。