定本 俺節 上
『俺節 1』など、旧コミックス版のゴールドに対して、シルバーが効いている表紙はインパクト十分。漫画家・土田世紀にとって、長い間“幻の傑作”であった『俺節』が、全3巻でついに、待望の復刊を果たした。
近年の土田作品、いや、『編集王』あたりであっても、そのあたりを見慣れた目で見ると、墨をたっぷり使い、勢いを持ちつつしっかりと描き込まれた『俺節』の世界は、かなり新鮮なものとして映るかもしれない(実際、巻末に描きおろしで載っている「久しぶりに描いたコージ」は、まるで別人。いわゆる“美形キャラ”のようですらある)。
この泥くささ、この愚直なまでのまっすぐなタッチ。
その画風はそのまま、この物語の主人公であるコージの生き方と重なっている。
どんなに不器用で愚かだと言われても、俺はこの道を、こう行くしかないんだ。
そんなコージの姿に自分を重ね、胸を熱くする読者が、今回の復刊でさらに増えるであろうことは、本当にうれしい。
読めば心に小さな、枯れない花が咲く。
そしてその花は、心のどこかで、あなたをそっと、そして力強く、励まし続けるだろう。
この『定本 俺節』が、旧コミックス版をこれまで愛読してきた方はもちろん、ひとりでも多くの新しい読者の手に渡ることを、オレは心の底から祈っている(本編の内容そのものに関しては、旧コミックス版の方にいくつか―1・2・5・8・9巻―レビューを書かせていただいているので、そちらもご参照いただきたい)。
なお、復刊にあたって新たに手が加えられた様子はなく、歌手名の間違いなども含め、旧コミックス版と本編そのものの内容は同一のようである(土田氏いわく「読み返しませんでした。なんか恥ずかしくて」)。
今回、この上巻、およびそれに続く中巻の巻末には、土田氏へのメール・インタビュー、それに描きおろしの1ページが掲載される。メール・インタビューはかなり興味深い内容で、楽しい読みものとなっている。そして最終巻となる下巻の巻末には、描きおろしの近況報告漫画が収録されることになっていて、こちらも楽しみである。
マイノリティ・リポート 特別編 [DVD]
『ブレードランナー』と同様この『マイノリティ・リポート』もP.K.ディックの作品を映像化したものです。やはり原作がちゃんとしているだけあって、この映画の作りも入り組んでいながらも凄くしっかりしていて見応えがあります。二転三転するストーリー、最後までわからない犯人とその動機、純粋にサスペンス映画としてみても面白いし、SF映画としてみても楽しめます。
また、スピルバーグの作品だけあって、未来都市を走る車や、犯罪防止科のエージェントが乗る小型の飛行機のような乗り物、人々の網膜を感知して個人を識別する装置など、細部にも凄くこだわって作られています。中でも、予知能力者が見た未来を映像化して映し出すパネル(モニター?)と、そのパネルを捜査するやり方は、何となくゲームセンターにある体感型のゲームのようで、見ていて何となく楽しそうです。
凄く丁寧に作られている面白い作品ですので、見ても消して損はないと思います。
アメリカ下層教育現場 (光文社新書)
著者の本職は米国プロボクシングを専門とするスポーツライターである。
半期だけ米国チャータースクール(最底辺の水準の生徒が通う高校として本書では紹介される)で非常勤講師を務めることになるが、彼の教育は自身の日本での「三流」教育で育ってきた背景に裏打ちされており、自身の低学歴ゆえに経験した「苦労」とそこから米国留学・フリーライターとして活動するという「セカンドチャンス」を掴んだ経験によって生徒を惹きつける教育者としての人格が立ち現れてくる。この人は教育者に(の方か?)向いてるんじゃないかと読んでいる方も著者の授業に引き込まれてしまう。
また、授業で引用されるライターとして取材から得たジョージ・フォアマン(元ヘビー級王者)の言葉は、著者が直接本人から聞いた話の中での言葉ゆえ、本人の温もりを感じさせる言葉として自然に響いてくることに読んでいてこちらも驚かされてしまった。安易な日本の教育への警鐘的事例で終わっていないところもよい読後感である。
マイノリティ・リポート [DVD]
犯罪の発生を予知するシステムが開発された近未来でのサスペンス。
システムを有する犯罪予防局でトムクルーズが巻き込まれるトラブルとは!?
近未来とはいっても、とんでもないマシンが
ゾクゾク出てくるものではないです。
犯罪予知というシステムを存在させるために
近未来という設定にしたものといえるからです。
ただ実際に欲しくなるアイテムとか、ホントに
こんなモノできるだろうな…というものが出てくるので
楽しみにしてください。
したがってサスペンスの要素が濃いものとなっています。
犯罪予知ということをふまえた上で、
ハラハラどきどきさせてくれます。
すごいCGが!とか、すごいアクション!とかいうものは
ありませんが(それなりにはあります)、
見終わって、うまくまとめたなという感じがしましたし、人間って…と考えさせられたりもしました。
それぞれの役者の演技もすばらしいと思います。
今なら安価で手に入るので、星を5つにしました。
(本来は4つ)
146分
トムクルーズ・サマンサモートン・コリンファレル・マックスフォンシドー
監督スティーブンスピルバーグ