テノール・アリア名曲集
講義で評論をするときに参考になるかもしれないと買ったわけだが、聴き始めるとそんなことはもう頭に浮かばなくなっていた。ステレオがビブラートしているというのは本当。テノールの醍醐味が十分に味わえる。
黒人霊歌集
洗練されたとても美しい発声ですので、『黒人霊歌集』特有の「魂の叫び」が伝わってくるかな、と思いながら聴きましたが、心の奥底に秘められた「哀しみ」がその真摯な歌声から伝わってきました。
バーバラ・ヘンドリックス自身のコメントにもありましたが、幼い頃から、教会を中心とした生活を送り、礼拝中に歌われる「黒人霊歌」との出会いはとても感動的だったと述べています。彼女の血に流れる「ルーツ」がこのような「哀しみの中から生まれる希望」を表現させているのだと感じました。
元々は1983年に発売されたものと1998年に発売された2枚のCDを1つのセット(2枚組)として発売された物ですから、「ジェリコの戦い」などは2つのヴァージョンを聴くことができます。
2枚目のCDは、ザ・モーゼス・ホーガン・シンガーズの合唱と一緒に歌っています。その分厚いハーモニーがまた「黒人霊歌」の醍醐味ですね。特に応答関係を持つ合唱曲にその魅力を感じました。
バーバラ・ヘンドリックスも、バック・コーラスがこれだけ素晴らしいと一層映えますね。
「時には母のない子のように」「誰もわたしの悩みを知らない」「深い川」「しずかに揺れよ、懐かしのチャリオット」「ギレアデには乳香が」「そっと行こう」「主はダニエルを連れ出されたのではなかったの」「けっして、ぶつぶつおっしゃらなかった」「いい知らせじゃないか?」という有名な曲が沢山収録されていますので、『黒人霊歌集』の好きな方にはたまりません。
特に「おまえはそこにいたか?(Were You There?)」の心の底から絞り出るような歌声は、これを聴く者をその敬虔な世界へと必ず導いてくれることでしょう。バーバラ・ヘンドリックスによって歌われる音楽はとても静かですが、このソプラノからは熱い思いが如実に伝わってきます。これこそが「黒人霊歌」なのです。
ピース
サウスロンドン在住の少年によるボーイソプラノグループ、Liberaのニューアルバム。
やはり、美しい。
Liberaを聴いて感じるのは、ほんの束の間に咲く花のはかなさを、あるいは午後の木漏れ日の温もりを、愛おしむような気持ち。ディーバ(歌姫)ともてはやされているシンガーももちろん好きですが、ボーイソプラノには彼女達とはまた違う美しさがあるなぁと感じます。
それは、日本語の解説に述べられていたように、彼らの歌声が少年期のみに与えられたものだからかもしれません。
今作の楽曲は、どれも教会にいるかのように思わせるものばかり。 荘厳で、神々しくて、やさしい。 キリストやマリアを讃えることにあまり共感を覚えない自分ですら、思わず泣きそうになってしまいました。 歌詞は確かにある「言語」で書かれてはいるけれど、ほんとうの「ことば」は「音楽」なんだなぁ…。
2010年上半期、最も人にオススメしたい一枚の一位ですね。間違いなく。
トムやジョシュは年齢的にこのアルバムには参加してないかな?と思ったのですが、ジャケット(裏・中)を見て嬉しくなりました(笑)