敗血症診療ガイドライン
2004年にSurviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)が上梓された際に感じた興奮は今でも鮮明に覚えている。「敗血症の」という但し書きは着いているとはいえ、重症患者の全身管理についてSSCGほどに過去のMile Stone Paperを掘り起こし、詳細な検討・評価を与えている文献は実に少なかったからだ。当時、自分は日常臨床に対する疑問をもてあましていた初期研修医ではあったが、明快で裏づけのある回答を与えてくれるSSCGに深く傾倒し、1週間と経たないうちに参考文献はあらかた読み終わっていた。実際、SSCGを足がかりにすることで、集中治療の現場で行われている治療の変遷や試行錯誤が理解でき、その後に続く様々な文献の理解も格段に深くなることがわかる‥もちろん、臨床における展望という意味においても。
2008年度のSSCG改訂版も実によくできている。が、2004年度版に比べるとVolumeが多くなり過ぎてしまい原著を読むことに躊躇いを覚える諸氏も多いだろう。本書は、本邦の実情を盛り込みながらSSCG2008のポイントを邦訳しまとめた良書である。願わくば、本書をきっかけとして、原著ひいては参考文献にも目を通し、あの興奮を共有して頂きたいと願う。
新生児ECMO -臨床の手引き-
著者は長年にわたり新生児外科を中心に診療を行ってきた臨床家である。その著者が横隔膜ヘルニアでの経験を礎に、PPHNとの戦いのなかで行き着いたECMO治療の集大成がこの1冊である。臨床家としてここまで長きにわたりその基礎から臨床、そしてフォローアップまで系統立ててPPHNと向き合って来た医者はいないだろう。
ECMOは新生児医療においてなくてはならない治療法の一つである。その肝はその適応基準にある。これまで、その誤った基準によりECMOの位置づけがおとしめられている事は非常に残念である。長年、PPHNの児を診療し長期にわたるフォローアップから決められた著者独自の適応基準は一考の価値があると思われる。
この1冊でECMOの歴史からその利点と欠点、実際の管理方法まで学べる。これは医師のみならず、ECMO治療に欠かせないコメディカル(看護師、臨床工学士)に対してもその役割別に詳細な解説がなされており、ECMO治療に携わる全てのスタッフにおすすめである。