小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)
深く生きることについて考えさせられた作品。
表題作二編は息子と、画家を志す友人へのメッセージとなっています。両作品の最後、
行け。勇んで。小さき者よ。と、
君よ!と、強く訴えかける部分はこうしてレビューを書きながら読み返してみても深く感動させられます。
これから強く歩んでいかなければならない息子たちに、画家を志すにも周囲の環境がなかなか許さない友人に、強く、 夢をあきらめずに進んでいってほしい。その思いが文章の中に溢れ出ています。
今、メディアなどで学生の自殺の問題が大きく取り上げられていますが、この作品はそれらの人生に悲観している人たちを勇気づけるのに十分ですし、こんなことが言えるのか分かりませんが、生きる事の素晴らしさを感じさせてくれます。
読んで損は無いです。というか、是非読んでいただきたいと思っています。
華の乱 [DVD]
巨匠深作欣二がオールスターキャストで手がけた大正ロマネスク作品。。。
と言うと敷居も高そうに思えますが、作品的には見所満載のザ・シネマに仕上がっています。
特に見物は実在の人物に扮した豪華俳優人。
吉永小百合の与謝野晶子、緒形拳の与謝野寛、風間杜夫の大杉栄、松坂慶子の松井須磨子・・・
それぞれが持ち味を最大限に発揮し、表面上でない(内面から絞り出すような)演技を観せてくれます。
その中でもやっぱり存在感が違うのが、有島武郎を演じた松田優作。
静から動、正常から狂気、人間の弱さや怖さを表現する演技は今観てもやっぱりすごいです。
(ちなみに森田芳光監督の「それから」で演じた代助役もそうですが、松田優作の着流しは本当に絵になります。)
俳優の内面を最大限に引き出そうとする深作監督の演出も素晴らしいです。
以前から(蒲田行進曲とかもそうなんですが。)深作監督の画面フルに人物を配した演出が「映画だなー」と思わせてくれて好きです。
(この映画だと楽屋裏での松井須磨子と島村抱月を奥の人物まで引いて撮るシーンとか、松井須磨子の長セリフのシーンとか。)
いつ観ても画面の端々まで緊迫感があります。
いずれにしても最近の邦画では観られない骨太の作品です。
或る女 (新潮文庫)
主人公、葉子が若さ、美貌、健康を持て余し、ついにその身を持ち崩す様が語られた、長編小説。国木田独歩の恋人をモデルとして発表された当時、話題になった作品である。 今の時代から考えるとそれほど突飛だと思われない主人公葉子の言動、はては生き様であると思う。時代の空気は彼女の物語にハッピーエンドをもたらすことを許さなかったのだろうか。 小説の前半はひたすら葉子の自己中心的でなんの美点もない人物描写にうんざりさせられたが後半からは、そういったことに惑わされず、一人の人間としての或る女の人生模様にたっぷりと魅せられた。長編小説でしか味わえないある種の感情の微妙なひだの奥深くまで葉子の道づれとなった。
一房の葡萄 他四篇 (岩波文庫)
有島武郎の書いた美しい愛の物語である。主人公の「ぼく」は友人のジムの所有する舶来絵の具を盗る。それが見つかり先生の前に突き出されるが、先生は彼を叱らず、ひとふさのぶどうを与える。
そして少年の心に芽生えたものは……悪いことをしたという反省の心。
ジムも少年を快く許し……
朗読 日本童話名作選「でんでんむしのかなしみ」
自宅介護している病気の父親のために購入しました。
たくさんの話が入っていることと話し手さんの話し方が非常に聞きやすいので良いと思いました。
父親は、それなりの年齢のため、知らない話が多いかもしれませんが、基本的に童話ですので誰でも楽しめる内容だと思いました。