クレイジー・ボーイズ
温暖化に効果があると言われる水素自動車の特許を巡る世界規模での企業と個人の争い。
中村教授の青色発光ダイオードの問題をベースにして、環境問題も交えた設定については、さすが楡さんと思いました。
最終判決の前に特許を取得した本人が殺されてしまい、その子供が父を殺した犯人を追う。
企業の生存を賭けた謀略に、後ろ盾を無くした息子がどう立ち回るのか。莫大な特許使用料を巡ったバトルの行く末がどう決着するのか?
と、期待いっぱいでしたが、後半は失速した感じで個人的には中の上。★3.5くらいでした。
クレイジーボーイズ (角川文庫)
楡修平の作品は初めて読んだ。
読んでいてそれなりに面白いし、話もわかりやすく文章も平易で読みやすいので、万人におすすめできる作品。
でも粗が目立つ。
中盤まで取り立てて頭のいい言動を見せなかった主人公が、ある時点でページをめくった瞬間に、
いきなりサスペンスに出てきそうな知能犯に豹変したり・・・。
日本の世論は技術者や研究者に冷たいっていう設定が出てくるけど、
昨今の技術者の訴訟に対する反応を見ている限り、技術者に同情的であることが殆どだ。
経済ネタや株ネタでリアリティを高めているのに、こういうところでチグハグな印象を受けるんだよなぁ。
主人公の焦燥感を高めるための舞台準備があまり上手くない印象。
父親が殺され、生活が困窮していく中で、
追い詰められた平凡な少年が復讐とこれからの人生のために、どんなcrazyな手段を取るのか、
読みながらかなり期待していたんだけど・・・意外と浅い手段だった。
しかし、戦術した通り、分かりやすいエンタメとして十分評価できるので、
ライト感覚にエンタメ小説を読みたい人にはおすすめできる。