ガダラの豚 1 (集英社文庫)
前半から中盤にかけては見事という他ありません(前編を通して)。素晴らしい描写、まぁよく考えたなと思えるストーリー。勿体ないのは後半の日本帰国後です。物語自体がオカルトだからそうなっちゃたのかもしれませんが、その道に走りすぎです。盛り上がりに欠けました。
しかし、総合的に評価すると、やっぱり最高です。ここまで書ける人を見ると、作家って凄いなぁと思ったりします。
寝ずの番 [DVD]
面白いとまず一言。ある落語家一門の師匠が死に通夜、“寝ずの番”をする弟子たちの姿をコミカルに、粋に、お下品に描いている。師匠のあとに兄弟子が死に、師匠の奥さんが死に、またまた寝ずの番。確かに後半、若干たるみがちだが、あーちゃんのエピソード良かったな・・。ヒューマンドラマとかもちろん洋画にもあるが、やっぱ日本産が一番グッと来る。日本人ですから、国民性で笑える微妙な表現や文化性は日本人じゃないとわかりませんもんね。笑いながら、胸打たれ、目頭が熱くなったのは初めてかもしれない。とにかく面白い!
腐っていくテレパシーズ
生前の自宅録音とライブテープの編集もの、あらかじめ発表を企図して製作されたわけではないが、結果として、奇跡とも言えるようなサイケデリックの名作となっている。ヘッドフォンで聴くと、角谷の自虐的な声や大胆不敵な演奏、録音上のノイズまでもが、耳を経由せず、直接脳みそに入りこみ、頭の中に角谷その人が棲みついてしまったような気持ちになる。サイケデリックの本質を極めた作品だが、ハマれば、幻聴トラウマとなる危険な作品。私は、他人の生きざまをコメントする立場にないが、本作は、角谷が命と引き換えに世に出した作品。心して体験しなければならない。
寝ずの番 特別番 [DVD]
マキノ雅彦第1回監督作品。マキノ雅彦とは、“日本映画の父”牧野省三(マキノ省三)を祖父に、生涯に261本の映画を監督したマキノ雅弘を叔父に持つ俳優、津川雅彦のこと。
原作は一昨年に亡くなった中島らもの同名小説。
監督の実兄である長門裕之が、上方落語の重鎮、笑満亭橋鶴役で出演している。
その橋鶴が、危篤状態になるところから物語が始まる。
弟子達は、師匠の最後の望みを叶えてあげようとするが、あろうことか、その最後の願いを聞き間違えたことから、ひと騒動が持ち上がる。
でもその後が本番。師匠が亡くなり、通夜が執り行われる。一晩中、寝ないで死体の番をする、それが『寝ずの番』らしい。
橋鶴のかみさんである志津子ねえさん(富司純子)と息子でやはり落語家の橋弥(岸辺一徳)、弟子の橋次(笹野高史)、橋太(中井貴一)とその女房(木村佳乃)、橋枝(木下ほうか)、橋七(田中章)とその女房(真由子(津川雅彦の娘))、落語作家(石田太郎)、よくわからない親戚の一般人(蛭子能収)らが、酒を飲みながら、師匠の思い出話に花を咲かせる。
最初の聞き間違いからして、この思い出話ももちろん、全編もう下ネタのオン・パレード。ビジュアル的にはエッチなシーンはないけれど、テレビでは放映できないんじゃないかしら。放送禁止用語の『ピー、ピー』ばっかりで、意味がわからなくなるでしょう。だからテレビでは観られないかも知れません。
で、一つひとつの思い出話が、おもしろい。流石上方の落語家。生活全てが落語的。話す方も落語家(もちろん本当は俳優だけど)だから、全ての話にオチがある。気持ちいい。僕も関西育ちなので、オチがない話は嫌いだ。
寝ずの番は1回で終わりではない。その後も2回、都合3回、寝ずの番が繰り返される。
そして、話すほどに、エスカレートしていく思い出話に歌に踊り。
よく画面を見ていると、いや、それほどよく見ていなくても、変なことが起きている。どれもこれも笑いの連続。
笑って楽しむエンターテイメント作品です。自分もこういう通夜に同席したい。自分の通夜は遠慮したいが……。
僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
古くは、漱石や太宰や中也。最近では村上春樹愛好者をハルキストと言うように。
ある種の人間にとって、著作を読む前と読んだ後とで、人生観が丸で変わってしまう位の
激烈な体験をさせてくれる作家が居る。僕にとっては、中島らも。
存在が劇薬、痺れっぱなしだ。この本には、如何にして彼が、
中島らも的な思考や生き方に辿り着いたかが書かれてある。
難関校として有名な灘校に優秀な成績で入学。したものの。
中学生でシュールレアリズムに傾倒、書道の時間テーマ無視した『自動筆記』
(内容の余りのアホらしさに爆笑)をやらかし、親呼び出され。
高校時代、授業サボって校舎裏で酒盛りしてる時に
三島由紀夫の死のニュース聴いて呆然としたり。
と、周りや世界から、堕ち零れていく様子が描かれていく。
特に印象的だったのが浪人時代の仲間の自殺に触れている所。
絞り出すように『生きて、アル中になって、醜く老いていって、
それでもまんざらでもない瞬間を額に入れてときどき眺めたりして、
そうやって生きていればよかったのに、と思う。』って文章に
刻む事の出来る姿勢の美しさ。キッパリと覚悟ある立ち方で書けるからこそ、中島らも。
圧倒的にリアルに響いて来るんだよなぁ。コミカルに、シニカルに世界を描く
らもさんの視点の原点が詰まっています。是非一度読んでみて下さい!!。