コーランを知っていますか (新潮文庫)
旧約聖書、新約聖書、仏教経典などと比べると、はてしなくつまらないコーラン。まあ「神の言葉」なんだからエンターテインメントを期待する方が間違っているのだろうが、あまりにもつまらないので(和訳なり英訳を)最後まで読み通したことのある人はまれではないだろうか。それだけに、イスラム教についての知識を持っている人は、かなりの知識人でも少数派。
そのコーランに、ホメロスから古事記まで、ありとあらゆる古典を、おもしろおかしく解説することにかけては第一人者の阿刀田高氏が挑戦。お蔭で「へー、コーランってこんなことが書いてあるんだ」ということがやっとわかった。
だけど、やっぱりつまらない。阿刀田高の文筆力をもってしても、さすがに神の力には敵わなかった、としか言いようがない。でも、つまらなくても読ますところは、阿刀田氏の力。コーランのことは知りたいけど、コーランそのものの翻訳はちょっと、という人にお勧め。
旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)
おなじみ阿刀田さんの古典入門です。西洋の文学作品を読む上で必要な聖書の知識。しかし、正直なところ信仰がない人にとって、あれを読むのはつらい。なんとか読んでやろうとして、挫折した人も多いのではないでしょうか。
この本はそのエッセンスだけを取り出し、分かりやすく叙述したものです。紹介だけで、やっぱり原典を読むべきという声もありますが、これで骨格づくりとしては必要にして充分だろうと思います。
また、他に聖書入門として三浦綾子さんの本も有名ですが、単に知識・教養・読み物として聖書を読みたい方は、阿刀田さんのほうをお勧めします。三浦さんはご自身が信者のため、叙述に思い入れがありすぎるのが難点です(それが正当なんでしょうが)。その点、阿刀田さんは、ご自身でおっしゃっているように「異教徒として」ひとつの物語として紹介していますので、読みやすいと思います。
やさしいダンテ<神曲> (角川文庫)
阿刀田高の古典解説シリーズ(と、私は勝手に命名しています)、ダンテの『神曲』です。
ヨーロッパの中世からルネサンスに至る価値観を知る上で必読の書、
標準イタリア語の基礎となった名著、
わかっちゃいるけど、読んだことはない。
そこは旧約・新約聖書やギリシア・ローマ神話やら、14世紀当時のフィレンツェやローマの政治やらが綯い交ぜになった世界、
日本人の身には一筋縄ではいかないところがあります。
阿刀田氏の博覧強記の解説が快刀乱麻を断つようにスッパリ解説してくれるかと思いきや、
それでもやはりよく分からない点が多々あります。
ただ、いと高きところにあると思っていた作品が
意外に個人的な恨み節に満ちていたり、私怨を地獄篇で晴らしていたりと
俗なところもあるんだと分かっただけでも少しだけ身近になったように思います。