創世(ジェネシス)―光を受けし者たち 「聖書新共同訳」準拠〈旧約聖書 1〉 (みんなの聖書・マンガシリーズ 3)
人類の古典である聖書の物語は、「学習マンガ」の枠内にせよオリジナル化の一般作品にせよ、すでに幾種類もマンガ化されている。この本は前者に属すので、展開はごく正統派、そのぶん読者としては、どういう絵で描かれるかがいっそう気になるものだ。そしてベテランあずみ椋によるこのバージョンは、流麗かつ力強く、艶とキレのあるタッチでたいそう美しい。少女マンガにしては高齢者の登場人物が多く、老若男女の描き分けも自然で達者と定評のある作家だけあって、壮年のアブラハムやモーセは渋く、天使らは中性的な美をたたえる。エデンのアダムとエバは可憐で、イノセントな子供らしさが効果的だ。
イサクの息子たち、ワイルドなエサウと狡猾なヤコブの対比がわかりやすく表現されている。実のところ私はヤコブをあまり好きでないのだが、欺きの多い己の人生を悔やむヤコブの姿には好感を持てる。
そもそもこれらのマンガ化はアメリカでの出版が最初にある企画だという。この「旧約」も「新約」に続いて各国で読まれてもらいたい。
旧約聖書 3―「聖書新共同訳」準拠 (みんなの聖書・マンガシリーズ 5)
同じくあずみ椋さんの漫画による、同シリーズ「旧約聖書1」には、辛い評をつけてしまった私ですが、
「旧約聖書1」と「2」を手放して後、この「3」を購入して読みました。
「3」は面白かったです。文字の羅列の聖書を読んだのでは何が書いてあるのか分からなかった(というか、そもそも読み進めない・・・)内容が、活き活きと伝わった。漫画としても良いと思います。
「旧約聖書1」と「2」を購入したときは、子どもの頃読んだり見たりした聖書漫画や絵画への懐かしさから来る期待と、左開き横書きの漫画に不慣れなことから、辛い評にしてしまったかもしれません。
本編、もくじ、巻末資料のすべての漢字にふり仮名がふってあるところが大変気が利いている。子持ちの人間にとっては大変嬉しいです。(漢字にふり仮名がないのはカバー、表紙、中の扉絵の題名部分、発行所等の説明ページ、本編の聖書の引用箇所提示部分だけ)
〈もくじにある小見出し〉
神殿建築、ソロモンの栄華、王国の分裂、預言者エリヤ、カルメル山の対決、天に上るエリヤ、奇跡を起こすエリシャ、イエフの謀反、ヨナの逃亡、アモスとホセア、預言者イザヤ、ヨシヤ王の改革、預言者エレミヤ、命の道と死の道、エルサレム陥落、エゼキエルの幻、エルサレムへの帰還、王女エステル、最後の預言者、星を待つ人々
旧約聖書〈2〉王国(キングダム)―国を建てし者たち (みんなの聖書・マンガシリーズ)
去年出た「'T 創世」に続く第2巻。モーゼの旅からダビデまで。オーソドックス路線で美しい絵でつづられる物語はやはり迫力満点。
怪力サムソンと美女デリラのエピソードはたいへん有名であるが、本で読むと呆れるほどバカに思えたサムソンが、バカなりに可愛く健気に見えた(似たようなことは、『ニーベルングの指環』のジークフリートにも言える)。「悪女」デリラにもまたそこはかとない哀しみが感じられる。
この巻で最も劇的なのはダビデかもしれない。聖なる使命を帯び、支配者となり、しかし友とは死に分かたれ、妻とは溝ができ、不貞におののき、愛息に背かれて嘆き悲しむ。その陰で、やはり功績をあげながらも心おごり、ためにダビデを狙い、良心と狂気の狭間で苦しむサウル王もまた印象深い。
筋肉男も苦悩男も、、もちろん女たちの勇気も苦悩も、あずみ椋の描きだす幅は広い。