ヤマトタケル (山岸凉子スペシャルセレクション 10)
手塚治虫先生他、多くの作家によって語られ続けている日本の神話物語です。
少女漫画独特のタッチに、男の私は宝塚歌劇を思い出しました。
導入部分多少読んでいてタルいですが、主人公が熊襲のタケル兄弟を付け狙うあたりから俄然面白くなります。最後まで一気に読んでしまいました。ヤマトタケル、いい奴で男らしくてかっこいいです。父親から疎まれながらも日本中を平定していきます。英雄物語として良く出来ています。
ただ、英雄に引きずりまわされる家来ややられる側からの視点には欠けます。それがあれば、「いい奴」だけではない、光と影のコントラストが効いた深みのある英雄像になったと思います。
ともあれ、歴史好きな方にはお薦めしたい四六版ハードカバーにふさわしい一冊です。
日本誕生 [DVD]
私は右翼ではありませんが、古事記に書いてある神話、すなわち日本神話にはかなりのこだわりがあり、こんなにすごい神話をこの国の人は持っているのに、それを知らない人が多いことを残念に思っていました。その神話をまともに映画にしたのはこの作品だけです。その点でこの映画は貴重です。
この映画は古事記の中の英雄伝説と神話の有名な部分だけをうまくつなぎ合わせてストーリーを作っています。その点ではワーグナーの「指輪」と同じです。3時間という長尺で、演出もややのんびりしすぎていて、「だれる」との意見があるのは理解できますが、なーに、鑑賞するのに四日間もかかる「指輪」と比べるとずっとコンパクトにまとまっていると言えます。DVDで鑑賞するなら、何回かに分けて見れば十分見れます。私はこれを昔、京橋のフィルムセンターで、一気に全部通して見ました。この時はその長さが、大きなイベントに参加したようなボリューム感、満腹感として感じられ、苦痛ではなかったと記憶しています。
さて中身ですが、「古代日本」が驚くほどちゃんと再現されているように思えます。私は古代日本をビジュアル的に見たいものだと思っていましたが、この映画はその点で、十分満足のいくものでした。そして神話の部分の表現は、幻想的に、かつ懐かしさも感じられるように作ってほしいもので、CGを使うような洗練されたものにはしてほしくないものですが、この映画はその点でも満足できるものでした。ミニチュア丸分かりの特撮も、神話や伝説なら全くOKで、その幻想的なビジュアルは実によかったです。スサノヲがオロチを退治する場面だけは、オロチが斬られもしないのにどうしてくたばったのか、わけがわからず、もうちょっと何とかしてほしかったものですが。でも、テナヅチ、アシナヅチが住む高床式の家はなかなか雰囲気がありました。竪穴式住居もちゃんと出てきます。
日本にもこういう古代の神話や英雄伝説があるということを知ってもらうためにも、お祭りの時なんかにこの映画の上映会をやるっていうのはいかかでしょうか。
ヤマトタケル [DVD]
私は当時リアルタイムで初めて自分でお金を出して映画を見に行きました。
もう少しクライマックスに向けての盛り上がりがしっかりしていればとも思いましたが、タケルとオトが戦いの中でしっかりとした信頼関係を築いていく流れは、とてもいいものではないかと思います。
主役の二人もそうそうたる面々ですが、わき役陣も豪華な面々が勢揃い!
特に前半の最大の見せ場に登場するクマソタケルを演じた藤岡弘さんと、オウス=タケルの高嶋政宏さんの激しい一騎打ちのシーンは外せません!当時私もすごくしびれました。
本当に剣の達人でもある藤岡さんの迫力も凄いし、高嶋さんも負けずに若さでぶつかっていく感じで今でも強烈に覚えています。
(当時買ったパンフレットに出ていた裏話によると、お二人とも炎に囲まれたセットの中でカットの度に酸素吸入をしながら撮影されていたそうです。)
それだけにクライマックスがもったいなかった気はするけれど、当時の最新のSFX技術もふんだんに使われた意欲作ではないでしょうか?
女装と日本人 (講談社現代新書)
「女装」を通して、日本の神話や宗教、歌舞伎や戦後のニューハーフ文化の変遷を書いた本です。性別を超えた存在とされる女装者が果たしてきた社会的役割(神・祭への奉仕、神と人との仲介、社会的弱者である女性の相談役、男女の仲介など)や文化の系譜を深く掘り下げた内容であり、衝撃の1冊です。人それぞれ果たすべき役割があることを考えさせられます。