沖で待つ (文春文庫)
タイトル作品を含む短編が3つ。
すべての働くひとに、という帯に惹かれて買った。
どの作品も気持ちよく軽く、そして、何かこころにしみじみとひびく。
タイトル作、やはり会社で親しい同期というのは、会社の付き合い以上の存在なのだと思う。
すべてかなで書かれた「みなみのしまのぶんたろう」もおもしろい。
繰り返して2回読んだ。
これから社会に出て行く学生にもすすめたい。会社にはこんな世界もあります。と。
crystal (完全限定盤)
昔からのファンで、復活を待ち望んでいました。
CD帯に「最高傑作」と書かれていますが、
決して大げさではありません。
myspaceで試聴した時は、バラードばかりな印象がありましたが、
CDでフルで聴くと、どの曲もとても完成度が高くて、
限定盤にしたのがもったいない、もっとみんなに聴いてほしいと思いました。
発売日に購入しましたが、未だに毎日聴いていて、全然飽きません。
歌唱力もレベルアップしてるし、shela作詞の2曲も最高です。
はやく次のリリース情報が出てほしいです。もうすぐ10周年ですしね。
やわらかい生活 スペシャル・エディション [DVD]
壁に貼られた街で撮った写真。硝子の器で泳ぐ二匹の金魚を見詰める躁鬱症の女。
とにかく最後まで眼を離せなかった。
ヒロインを演じる寺島しのぶは云うに及ばないだろうが、不惑を過ぎた豊川悦司の自然体を呈する芝居も何とも優しく華々しかった。
劇中、ヒロインが両親の七回忌の席で「私は精神病院に入退院を繰り返しておりまして」と親族に淡々と打ち明ける場面がある。
同情しにくい被害者ならぬ「破綻者」など、安易な探偵趣味でいくらでも潰せるにも拘らず、だ。
必然的かどうかは判らないが、善行に絡む半ばいやしい「陶酔」とやらを破壊する潔癖性や手探り、
或いは自力では到底及ばぬ事柄がこの社会には多いことを諭す傲慢性などは対人関係を粉々にする。
その倫理は時代思潮など斬り捨てる永劫の現実だろう。
精神病棟入院患者に眼を向けてみると対家族関係には大きく3つのパターンに分類されている感がある。
すっかり断絶され国の厄介になっている者。
頼んだ品だけ鉄の扉越しに看護師伝いに手渡される者。
見舞いに来る献身的な家族の顔が、実年齢よりひどく老けている者。
「心の捻挫」とは理性と感情の埒外にあり、神経を通り、時に暴走するものだと思われるが、ヒロインが隔離されてゆく閉塞感と、
持ち前の明るい性格の混雑に悶えている街の狭間で、
同情を乞うためにする打算的な言動の数々が、何とも哀しいリアリティーに溢れていた。
銭湯に浸かりながら最後に聴こえてくる幻聴。頬を伝うもの。
それを「恥」とばかりに幾度も湯で洗い流そうとするシーンに、それでも現実は変らずにずっと続いてゆくものなんだと熟知しているかのような美しき少女の悔し涙を垣間見て、
いつまでも尾を曳いた。