葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)
ショパンに関する小説で、これほどのものはもう誰も書くことはできないだろう。この完成度に圧倒される。
とにかく文章が美しい。
言葉のひとつひとつが選び抜かれ、表現の精緻さが際立っている。
その選ばれた言葉はこれでしかありえないという洗練であいまいで表現しにくいニュアンスを余すとこなく伝える。
それは登場人物の背後の蝋燭の炎のチラチラとした揺らぎまで感じさせるほどだ。この精緻さに圧倒される。
速読や乱読は許されない。これはじっくりとそして何度も読み返すべき本だ。
ところでショパンは、作曲の際一つのパートを何週間も何週間もかけてああでもないこうでもないと散々いじった挙げ句、結局最初のものに戻すといったようなところがあったそうだ。
が、それで出来あがったものには微塵もその苦悩の跡すらみられない。それがショパンが天才たるゆえんだが、趣味による洗練ということをとにかく好んだ人だったようだ。
本書もそのように極めてショパン的に書かれたのではないかと思う。
この小説はショパンの晩年からその死にいたるまでをほぼ事実に即して書かれているものだ。
だからこその「葬送」なのかなぁと漠然と思っていた。
が、ショパンのピアノソナタ第2番葬送を聞くと、このショパンの晩年をめぐる美しく悲壮な物語はこの曲そのものだ。
葬送 平野啓一郎が選ぶ”ショパンの真骨頂”
絶対に買いですね。
聞いていて、ふと、平野啓一郎さんが小説「葬送」を書かれていたころの風貌を思い出しました。
「葬送」は年々、重みを増してるような気がします。
芸術も消費されるためだけに作るられることも多い世の中で、作家がある決意を持って、自分の作品と真剣に向かい合い
そしてそれが、色あせないのは奇跡的なような気がします。
ただ、純粋にこの音楽に向かい合ってみたいと思わせる輝きが、このCDにはつまっています。
かたちだけの愛
平野啓一郎ファンの方は気を悪くされるかもしれませんが、
私はこの作品をあまり面白いとは感じられませんでした。
ストーリー展開や人物描写など、全体的にチープな印象が
残りました。
本を読んだ感想は人それぞれであり、他人のレビューなど
あまり意味のないものなのかもしれませんが、まあ、
このように感じた人間も一人いたということで。
ショパン:伝説のラスト・コンサート
ショパン最後のコンサートを再現した話題性のあるCD。EMI所蔵の録音を厳選して並べている。選曲的に、コンサートを聴きに行っている雰囲気を楽しめる。
古い録音が多いが、リマスタリングが効いていて雑音はない。
私的には、フランソワのノクターン第8番がお勧め。しんみりと聴き入ってしまう。
オールソンのプレリュードも非常に良かった。