ワルツ・フォー・デビー‾ビル・エヴァンスに捧ぐ
スペインのギタリストによるビル・エバンスへのオマージュ。
エバンスのフレーズをギターが巧みになぞっているが、
それだけではなく、アンサンブルにも工夫が凝らされている。
曲ごとにサックスやトランペット、ボーカルなどが入るが、
いずれも気が利いているし、トータルで変化もつけている。
(ジョー・ロバーノやトム・ハレルなどの演奏も適任という感じ。
全体を通してマーク・ジョンソンのサポートも素晴らしい。)
時折のフラメンコっぽいフレーズにも違和感はないし、
むしろ本家より明るい印象、日だまりのような雰囲気を与えている。
とはいえ、演奏自体にはエバンスのような深みはないし、
これがジャズかといわれると首を傾げる向きもあるだろう。
まあ、煎じ詰めれば、品のいいアルバム。それ以上でも、以下でもない。
対峙して聞き込むような作品ではないが、心地いいBGMには最適だ。
聞き慣れた曲ばかりなので、ビル・エバンスファンなら十分楽しめると思う。
ついでに、原題の「PAZ」はスペイン語で「平和」。
1曲目の「Peace Piece」からとったものと思われるが、
ジャケットワークも含めて、この作品の雰囲気にマッチしたいいタイトルだ。
有名曲におもねた安直な邦題は少し残念な気がする。