極北の怪異 (極北のナヌーク) [DVD]
演出とドキュメンタリーのほどよい混じり合い。
そして白黒なのに、ハイビジョン映像よりも極北の生活を描き出すことに成功している。
とくにストーリーに起伏があるわけではないけれど、この映像をずっと観ていたいと思わせられる。
その不思議な力はフラハティたちによるのか、それともナヌークたちか。
その答えを保留したまま、しばし映像にひたりたい。
極北の怪異 [DVD]
学生時代に、色々と映画を見まくっていたころ、
ひょんなことから出会うことになったのが、本DVDでした。
そして、この世紀の傑作と言えるドキュメンタリー映画に出会ったことが、
その後の私の映画鑑賞人生を一変させることになったのです。
この映画で描かれているのは、
カナダ北部に住む原住民であるイェスキモーの一家を追うというもの。
映像作成の時代的背景からか、サイレント仕様になっていますが、
字幕があるおかげで(むしろ無くても)、十分に内容理解になります。
映像も大変古いものですが、映像に宿っている作品の濃密さが、
古さをまったく感じさせない程のリアリティーを保っています。
たとえ、映像がドラマでなくても、
また、映像の演出をCGなどに頼らなくても、
充分にその内容の時間の濃さによって、作品は成り立つということ、
こうしたことを啓示のように伝えてくれるのは、
なかなか出会うことのできない機会です。
この作品を観てからというもの、
劇映画に対する嫌悪感が激しくなってしまって、
とりわけ、演出・表現に対する今まで以上に意識が高まってしまって、
ほとんどと言っていいほど観なくなってしまいました。
そして、そこから、単館上映系のドキュメンタリー映画にどっぷりと漬かって
1 アテネ・フランセ文化センター (お茶の水)
2 イメージフォーラム (渋谷)
3 ユーロスペース (渋谷)
4 ドイツ文化会館 (赤坂)
5 山形国際ドキュメンタリー映画祭(山形)
などといったセンター及び映画館・映画祭に足しげく通うことになりました。
劇映画の演出過剰に辟易している方、
表現とは露出することなの、と疑問視している方、
また表現世界の新たな地平を求めている方、
こういった積極的に芸術の世界を求めている人にこそ
是非ともおすすめしたい作品だと思います。