五稜郭残党伝 (集英社文庫)
史実を最後にからませながら、読む人の想像力を膨らませるいつもの佐々木氏の手法で,五稜郭の残党二人と官軍の息詰まる追跡劇。己の生き方を貫こうとする二人に明日はあるのか。そして最後は・・・。幕末という時代ながら、今を生きる人間に「生きる意味」を問う名作。佐々木氏の著書は全部最高だけど、まさにここに佐々木節があると思う。
勝海舟 [DVD]
幕臣でありながら、明治になって爵位まで授けられた、勝海舟の物語です。
明治維新、というと薩摩藩、長州藩、土佐藩を中心とした討幕派が描かれることは多々あると思います。このドラマでは徳川幕府側に身を置きながら、日本という国の将来を見据えた男が主人公となっております。
戦争シーンなど迫力のある映像は特別ある訳ではありませんが、勝海舟とその周りを取り巻く家族や、盟友などとのふれあいを視聴者に飽きさせずに映像化されています。
ただ後編でもって主人公を演じている俳優が、田村正和から田村亮へと代わり、前編とのキャラクターの違いが出てしまったのが残念です。
婢伝五稜郭
五稜郭陥落時、傷病平や医師まで惨殺した官軍に対し、生き延びたナースが復讐鬼と化す。医療技術を用いた殺しのヒロインで、「これが戦だ」と言い訳する標的に対し「なら、これも戦だ!」となぶり殺しのメスをふるうさまは、べらぼうにカッコいい。連携するアイヌ青年やドイツ人農園主など脇役も個性豊か。
五稜郭 [DVD]
明治維新といえば、坂本龍馬、西郷隆盛、高杉晋作・・・別のレヴューでも同じようなことが書かれていました。上の三人は、暗殺、(乱を起こした末の)自決、夭折と、俗な言い方ですが、「ドラマチック」な死に方をしています。このドラマの主役の一人、土方歳三もまた然りです。
しかし一方で榎本は、生き残り、政府要職を歴任します。それを生き恥と解釈する人もいるでしょう。しかし函(箱)館戦争中の彼には、武士としての意地の他に、国に対する、人に対する「愛」や「夢」があったのではないかと思っています。賊軍になろうとも、国家百年の計のため、あるいは愛する人のために戦う…。そんな熱い思いを敗者の側から描いています。そしてインテリ特有の理想主義にとらわれながら、榎本その人がいかに情熱的な人であったかが判ります。
映像的に少しばかり難はありますが、それはやはり時間の経過故避けられないこと。渡哲也の「装飾過多」というのでしょうか、オーバーアクトに辟易しなければ、それなりに楽しめるかと。