砂の女 特別版 [DVD]
都市生活者なら誰でも自分が閉塞状況におかれていると感じることがあるはずだ。原作はいうまでもなく、大江健三郎よりも早くノーベル文学賞を取るのではないかと目されていた安部公房の傑作。十数カ国で翻訳され、川端康成や大江よりも多く人々に読まれたという。都市生活者の精神的な閉塞状況を砂丘に埋もれそうな穴に暮らす人々の生活を描くことで見事に再現している。この映画は「前衛」という言葉が、軽い憧憬を伴って肯定的に使われていたころに制作された。監督はもちろん音楽、撮影、そして出演者などの制作に関わった人々が、自らの情熱に疑問を感じることなく仕事を果たした幸福な作品だ。岸田今日子が美しく素朴な後家をけれん味なく演技じている。芸術と娯楽を止揚した日本映画史の金字塔だ。
砂の女 (新潮文庫)
映画は遥か昔、大学生の頃に観たのですが、英国の店先でDVDが売られているのを偶然見かけ、久しぶりに原作が読みたくなって本棚から引っ張り出して読んでみた。
言葉を紙面上に紡いで芸術を描くのが文学と言うのであれば、今さらの陳腐な言い方ではあるが、この作品はまさに珠玉の文学だと思う。文学作品には難解なものも多いが、難解であることが文学作品の条件では無い。この作品は難解さを感じさせずに一気に読むこともできる。こういった強引に読み手を引きずり込むストーリー展開から、「よく出来たサスペンス」と片付ける方もいるかもしれないが、ここに描き出される人間の業、辺鄙な部落社会での不自由な幽閉生活の裏返しとして描かれる文明社会への批判、「自由」な社会の住人であるのに関わらず見失ってしまった自己の存在など、作品のメッセージをいろいろと考えながら読むべき作品であると思う。
そういう意味で一度ではなく何度でもくり返し読むことに耐えうる作品であり、読者個人の背景によって様々に共鳴できる要素を持っており、様々な解釈をさせてくれる広がりのある作品だと思う。
ことばはちからダ!現代文キーワード―入試現代文最重要キーワード20 (河合塾SERIES)
文章の中で単語を解説してます。
現代文を始める前にこの本をやるのが良いと思います。
難関大の現代文にはパラドックスなどの難しい単語が必ず出てくるので
対策が必要です。
夜にはずっと深い夜を
実はあまりテレビをみないので、このひとの芸はネットでしか見たことがありません。外に向かって開いている瞳を、眼球をぐるっと回転して、自分自身の脳みそのひだひだを見つめ、見えてきたものを吐露するような彼女の芸やせりふは、むしろ文章で読みたいとずっと思っていました。
本作は私の期待を裏切ることなく、どこから読み始めても、あるいは読み終わっても同じような素敵なモノトーンでまとめられた短編集です。大好きな別役実の不条理劇や童話集を髣髴とさせる本作は一読以上の価値があります。
今度はぜひ長編を読ませていただきたいという期待を込めて星四つとしました。
The Woman in the Dunes (Vintage International)
欧米にもジレンマという概念があるので、砂の女を英語にするのは、それほど難しくなかったのかもしれません。
日本語で読んでも、意味は少しわからないところがありましたが、
英語で読んだ方が、ああ、そういう意味にも取れるんだと、意味が逆に取れることもあります。
著者の意図かどうかはわかりませんが、一人の読者の読み方であることは確かです。