嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)
希少な経験と卓抜な表現力、米原万里さんは、得難い書き手だと思います。
ギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビア……プラハの学校で席を並べた、
国籍の異なる3人の同級生との思い出と再会を描いた本書。
中でも、私の印象に残ったのは最終章「白い都のヤスミンカ」でした。
今も民族紛争の絶えない旧ユーゴスラビアに生きる、
「普通の人々」の姿が曇りのない目で写し取られています。
ベオグラードのイスラム寺院で、ボスニア・ムスリムの少年が
万里さんに語った次の言葉には、真に平和を求める心があります。
「異教徒に対して寛容にならなくちゃいけないんだ。
それが一番大切なことなんだ」(本書p261)
本書に描かれたときにはまだ存在していた
「ユーゴスラビア連邦共和国」はすでにありません。
その後、ヤースナ(ヤスミンカ)はどうしているのでしょうか。
打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)
タイトルは大風呂敷でワクワクする筈ですがこれで遺稿となれば言葉も出ません。
最初から読み進めてもいいし気紛れに捲ったページから読んでもいい。
一気に読むより毎日少しずつ読む方がいい。通勤時でも休み時間でも寝しなでもいいけれどこの本を読むために時間を割きたい。
最初で最後の書評集は闘病記が収められています。いつもの彼女であるし、そうでないような気がしてしまうのは読み手のせいだけではないはずです。
不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)
本書は、米原万里の作家としての実質的なデビュー作である。
絶妙なタイトルは、本編の内容を期待させるが、裏切られること無く堪能できる。
同時通訳者が日頃如何なるストレスに晒されているのか、依頼者か、通訳の対象としてのスピーカー・原発言者か、聴衆か、はたまた実は他言語の通訳者か。
本書によって明かされる、言語の背景をも含めた文化の衝突と相克が、生きた人の現場の右往左往と突発的な自体に遭遇した場合の人間のある種漫画的な突破力・瞬発力を含め、「事件は現場で起こっている。しかし、基礎と蓄積と閃きが無ければ事件は解決しない。」と思わせる。
同時通訳業界のイメージが、読書前と様変わりし「斬った張った」の世界であると認識された。
しかし、いま新規に本書のような内容が編まれるすれば、通訳業界のクライアントは許すのだろうか?
世界・わが心の旅 (2巻セット) [DVD]
BSで放送された宮崎駿監督の回「世界・わが心の旅 ~サンテグジュペリ 大空への夢~」を観ました。旅の途中で監督の乗る飛行機と並んで飛ぶ飛行機に「紅の豚」中のフェラーリンとの別れのシーンと同じような旋回しながら離れて行く飛行を要求するなど監督の飛行機好きの様子が見て取れます。又、監督のインタビューやドキュメンタリーは様々なTV番組やビデオ等で観ましたが、この番組だけで見せた監督の涙は感慨深いものがありました。
高畑勲監督の回は見逃しました・・・。