マンガでわかる有機化学 結合と反応のふしぎから環境にやさしい化合物まで (サイエンス・アイ新書)
本書は、有機化学は暗記科目ではなく、アートだということを教えてくれる。
右ページが漫画で、左ページは説明という構成だ。説明は、必要最低限しか書かれていないので、
かえってコンパクトだ。それでいて、授業では習わなかった「へー」と感嘆してしまう
新たな知識までたまに織り込まれていて刺激的だ。絵柄が可愛らしくて親しみやすい。
高校生も大学生も楽しみながら学べる。社会人は楽しみながら復習できる。
著者は、漫画だけ読んでもいいと前書きで語っている。漫画を読んで気になれば、
左ページの説明を読めばいい。本書で目覚めたら他の有機化学の本も読むのもいいが、
できればその段階にいってほしいという。そうなってくれれば作者冥利につきるだろう。
夢を持ち続けよう! ノーベル賞 根岸英一のメッセージ
去年ノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏が書いた本です。受賞後の初の出版ということで興味を持って読んでみました。
口述筆記なのでしょうか、根岸氏が過ごした時代ごとのさまざまなエピソードを短い文章で書き連ねた構成になっています。その構成のせいで、読みつつ、氏の人生に徐々に感情移入してゆくというよりは、合間合間でちょっとずつ読んでしまう本です。受賞後初の出版なので、できればしっかりとした構成にして、じっくりと腰を落ち着けて読めるものとした方が良かったのでは、と悔やまれます。
そういった点はさておき、書かれている氏の人生観には、さすがノーベル賞の化学者と思わせるものがあります。
特に印象に残ったのが、人体に有害な元素を触媒として使う研究はしないと決意していた点。ここに、氏の、研究に対する基本スタンス、つまり、人間に役に立つ研究でないと意味がないというもの、を知ることができます。
もう一つ面白いのは、ノーベル賞を受賞するのは1千万人に1人の割合なのだが、人生の節目節目でその確率が絞られていったことを数学的に説明している点です。理系の人間は、数字を使ってロジカルに考える、という当たり前のことを改めて感じたところです。
気楽に、と言うと語弊がありますが、堅苦しい内容は全くなく、それでいて、偉大な研究者が秘めた信念を感じることができる本です。新年の始まりに読むに相応しい本ですね。