飛ぶ読書室―この本がおもしろいよ (進学レーダーBooks)
小中学生向けの読書案内、それも特に古典案内である。内外の古典、小中学生が読んで面白いと思われる作品が麗筆によって巧みに紹介されている。
兎に角、小中学生にお薦めしたい。読書とは楽しいものであり、その基礎ができるのは小中学生のときである。これは私自身の経験から言っている。そして、高校生から大学生にかけて、それを発展させることが重要だ。
東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)
明治から昭和初期にかけて、東京にはそこらじゅうにスラム街がひろがっていた。本書は、当時の大量の記録を元に、明治維新後の福祉政策、弱者救済が如何に軽視されていたかを、つぶさに見ていく。
前半はスラム住人の住環境と食の悲惨さ、後半は娼婦と女工の過酷な労働実態に光をあてる。当時、東京の住人の15%、約30万人がこうした生活困窮者であったという。現在の人口比でいうとなんと120万人になるから、その凄まじさに呆然となる。ちなみに平成12年の東京23区内のホームレスは6000人弱、である。
都市がスラム化する原因は、人々が田舎の定住生活を捨て「流民」になるからであるという。
どんなに立派な高層マンションに住んていても、そこに定住するつもりがないなら、それは流民である。流民はそこを終の棲家だと思っていないから、近所とも付き合わないし、ごみを廊下に積んでも平気である。そうして流民の心は荒んでいく。当時から100年たって、建物は清潔になり、食べるものにも困らなくなったが、人々のモラルは地に落ちたままだ。流民の心の荒廃は当時のスラム住民となにも変わらない。これが著者の主張である。
福祉政策の問題、弱者救済のあり方、貧困が招く心の荒廃など、本書が現代に提示する問題は多いが、こんなに貧しい日本がかつてあった、ということを知るだけでも、いろいろなことを考えされられる一冊である。
本は、これから (岩波新書)
本の書き手、読み手のほか、図書館関係者、出版関係者、古書店経営者、大型店舗従業員、編集者、装丁家等々、本に関わる様々なジャンルの人たちの電子書籍に対する意見であり感想である。
総じて古書店経営者は扱う対象からして当然であるが電子書籍にはあまり興味が持てないようである。また読み手の多くは紙媒体であろうと電子媒体であろうと要はコンテンツ次第という感想が多いようである。しかし、中には電子書籍をことごとく毛嫌いする人も少なからずいるのには少々意外である。その毛嫌いする程度が並大抵ではないのにも相当驚かされる。
また印刷物以前の書物はどうするのか、これらもデジタル化するのだろうか。竹とか木々に書かれた古文書の類があるがこれらの「書きもの」をデジタル化してもはたして誰が読むのだろうかという興味深い意見もある。
電子書籍は今年が元年ということで、今後どのようなコンテンツがリリースされるか、どのような電子機器が開発されてくるかは全く未知数である。しかし、紙ベースの書籍はなくならない、という方向性では意見が一致しているようである。