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貧困の観察その伍 上野公園での「炊き出し」

貧困の観察その伍 上野公園での「炊き出し」


以前から「炊き出し」を一度視てみたいと思っていたのだが、今日、偶然、遭遇した。 また、さらに偶然にも、大江戸線の中で、紀田順一郎「東京の下層社会」の中の「残飯屋の凄絶な実態」というくだりを読んだところだった。その一部を引用する。 食べ物を商う店が並んでいる中に、ひときわ目立つのが残飯屋であった。松原岩五郎(明治期のルポライター)は伝手をたどって鮫ヶ橋の残飯屋に就職、仕入れから販売までを担当した。朝昼晩3回にわたって桶をかついで士官学校の厨房に残飯を仕入れに行く。汁菜、たくあんの切れ端、食パンのくず、魚の骨などを大八車に積み込んで帰ってくると、老若男女がいっせいに丼や桶をかかえて駆け寄ってくる。「二銭ください」「三銭ください」と争って容器を差し出すさまは、魚河岸の市に似て名状しがたい大混雑。 中略しかし、このようなものでも常に士官学校から出るとは限らない。時にはまったく出ないこともあって、これを「飢饉」と称した。あるとき飢饉が三日も続いたさい、岩五郎は賄い方に「せめてパンくずでも」と頼み込んだところ、ごみに出そうとしていた豚餌用の餡殻(あんがら)、肥料用のジャガイモのくず、味噌汁の滓(かす)などを持っていけと云われた。エサはキントン状になって、やや腐敗している。やむなくこれらを積み帰り「飢饉」と前触れをしたとき、待ち受けている人々の表情は一瞬、失望に包まれたが、荷を視るや「菜だけでもいいから早く分配せよ」と催促を始めた。 この光景に接した岩五郎は、次のような痛哭の反省に導かれる。残飯を売ることは人命救助であり慈善であるかもしれないが、場合によっては豚のエサや畑の肥料を売って銭(ぜに)をとるような不応為(法文に規定のない犯罪)を犯すことのやむなきに至ることもある。もしもあなた方が注意して視 ...
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