スケアクロウ [DVD]
いわゆるニューシネマというのは、悲惨なまんま
お話が終わってしまうのが特徴で、そこが美学
であったりもするのでしょうが、
そこがやっぱり悲しい。
安易なハッピーエンドも大嫌いだけど、
もうちょっとなんとかならないかなあ?
と思ったりするのです。
洋ものだけじゃなく、日本の70年代ATG映画
とか含めて・・・。
だからこの映画もぼくは長いこと避けてて、
「どーせ最後はヒサンな結末なんだろ?
自分の生活がヒサンなのに観てらんないよ」
と思ってました。
それでも気になってつい観たら、主人公たちの
人生放りっぱなしの内容じゃなくて、だけど
シビアで悲しくて、でも他のニューシネマには
ないあったかさがある、素晴らしい映画だと知りました!!
ケン・ローチの映画にも通じる、現実からは目をそらさない
けど、不幸を不幸なまんま仕方ない、なんてあきらめたく
ないぞ!!というテイストがあります。
こういう話の展開は、どんなジャンルのフィクションでも、
何気ないけど描くのむづかしいと思います。
ぼくは大島弓子さんのマンガや、
古谷実さんの「ぼくといっしょ」を
思い出しました。
「何もかもやってらんねえ!!」
という気分の人に観てほしい!!
タクシードライバー【字幕版】
人間は二種類に分けられる。部屋にタクシードライバーのポスターが貼ってある人と、そうではない人。私のまわりにいる人に尋ねたところ、23人中、12人が「はっている」と答えた。52%。過半数を超えている。
というのはまったく嘘ですが、私にとっての『タクシードライバー』は、ポスターのイメージ、言い換えるなら、トラビス(デ・ニーロ)のモヒカンなのです。みるからに、「いかれた」感じがするでしょう、あのポスターは。
安心してください。実際、作中でも暴走しまくりです。下層階級の鬱屈した重いとか、当時のアメリカの(ベトナム戦争に象徴されるような)暗い状況とか、いろいろ難しい問題もあるかもしれませんが、そんなことはとりあえず横においといて、ビジュアルだけでもう充分に楽しめます。
見た後にトラビスの真似をするのは全然かまいませんが、自分の部屋の鏡の前だけにしておきましょう。確実に真似をしたくなるとは思いますが…
タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]
冷たい都会を舞台に、時代に、社会に取り残された男の内面描写で淡々と進む物語。
今見返してみると、この映画が伝えたいことは大きく分けて二つあって、
ひとつは、時代ってのは常に流動的であって、その時代、その社会事に取り残されていく
者がいたり、そこに溺れていくものがいるという事だ。個人の価値観は皆違うので
それを受け入れる者、そこに孤独を覚える者がいるのも常に当然だろう。
そこで開き直って、反倫理的な行動をとったものがいても、それを100%悪だなんて
誰にもいえないだろう。
そして、もうひとつはアメリカ社会の英雄願望的なものだ。アメリカで英雄になる事の
皮肉さが、この映画からは滲み出ている。
よくよく見返すと、なんでもなかったラストシーンが、とても意味があって、憎い演出
のように思えてくる。
今みるとデ・ニーロ以外にこのトラヴィスを演じれる役者はいないだろう。はまり役すぎる。
映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)
ニューシネマがどうして出てきたか、そしてどうして消えていったか、その前後のアメリカ史とみごとに絡めて説明していて、なるほどねぇと感心しました。ここに扱われている映画を見ていれば絶対に退屈しません。
ただ、2001年で HAL がなぜ狂ったのかを説明するのに、実は当初説明するシーンがあったのにそれを取ってしまったから理由不明になってしまったのだという細かい説明があり、確かにそれらの話は知らないことが多くてなるほどとは思ったのだけど、完成した作品に入っていないものによる説明のやり方は個人的にはちょっと納得できないところもあります。
親愛なる者へ
わたしは、個人的にこのくらいの時期から『寒水魚』を頂点とする時期に至るくらいまでのみゆきさんが一番好きですし、きっとそうした人は多いことだろうと思います。
世の中に楽しいことだけなら、いいんだろうけど、そうしたものではなく、また、やっぱり楽しいだけの世の中なんてどこかヘンテコなような気もします。ちょっと沈んだとき、内省したいとき、世の中と自分との間に違和感を感じたときなど、みゆきさんの詩、旋律、声には妙に力強さを感じます。単純に元気になるというんじゃなく、一旦深いところに沈んでいた複雑な思いが再び浮かび上がってくるような、生きる力をもらいます。実際に人の思いの中からしか生まれない芸術というのがあり、そうしたスピリチュアルな側面というのは、けして捨てたものではないのです。普通に聴いてもいいですが、疲れているときにみゆきさんを聴くとすっかり親和してしますのです。
歌詞として書かれている以上、詩として読むと甘さや、大時代的な芝居がかりを感じたりもすることもあるのですが、いくつかは間違いなく現代詩としても優れていますし、それが実際みゆきさんの声で歌われると、実に戦慄的です。
このアルバム中、一番のお勧めはやはり『狼になりたい』でしょう。緩急自在に操られる言葉の魔法に粟立つほどの凄みを感じます。また、現在の日本の一部のクラシックや、ジャズ系を除いたいわゆるポップス、歌謡曲といった音楽シーンにまったく親和できないわたしとしては、このアルバムくらい(これもいわゆるポップスとしてつくってるんじゃないだろうけど)の音づくりが調度いいし、たぶんきっとみゆきさんにもっともあうのは、こうした音世界です。今でも、みゆきさんの音はこの頃からさほど変わってるとは思いませんが、それで正解だと思います。