セックスと嘘とビデオテープ [Blu-ray]
90年代中頃から、個人的にはハリウッド・若手才能のナンバーワンは、疑うことなく、スチーブン・ソダーバーグだった。
それがだんだん、証明されてきている今日この頃だろう。
「アウト・オブ・サイト」も「トラフィック」も「チェ」も、ソダーバーグでなければ作り得ない映像マジックの世界だ。
そのあくまでアナログ的に、手作り感覚で、フィルム特性を生かした上で、人工的に着色加工されたような映像仕立てとすることによって、かえって物語にリアリティを吹き込む、という逆説的な映像テクニックの手法は、作り手に相当な芸術的感性の鋭さがなければ出来ない荒技だと思う。
だからこの手法はその後、アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ始め、後続の鬼才作家にも絶大な影響を与えるに至っていることが早くも映画史に刻み込まれた事実となっているのだ。
この映画はその才能が開花した最初期の作品。本作で二十代にして1989年度カンヌ映画祭パルムドール大賞受賞というのもこの人ならではだが、この実験的かつ成熟した映画作りの確信犯的タッチといったらどうだ。何度見てもほれぼれとする映画とは、こういう作品で、従ってブルーレイの高画質はうってつけ(だからソダーバーグのハイデフ化ソフトは北米本国では多いのだ。「トラフィック」の早期国内発売を望む!!)。
DVDを持っているが、ブルーレイの廉価を待ったかいあり。早速購入だ。
セックスと嘘とビデオテープ【字幕版】 [VHS]
この映画が作られた時代ではなく、いま、この時代にこそあった映画。
たぶん、人間は他人の話をきくことが本能的に好きなのではないかと思う。話された内容がどうとかこうとかということではなく、ただ「聞く」というその行為自体がそれだけで楽しい。
たぶん、人間は何かを記録することが、本能的に好きなのではないかと思う。どういうものを(対象)、何に(メディア)に記録するかということもそうだが、それよりも、「記録する」という行為それ自体が、なにか自分が神様にでもなったような感じがして(もちろん錯覚ですが)気持ちよい。
非常に速度感のない映画(ほめ言葉です)であるけれども、くいいるように見てしまいました。近い内にリメイクされるような気がします。まったく勝手な思いこみですが。