ニセ札 [DVD]
登場人物たちが多角的に書き分けられているし、キャスティングも適役が配置されています。ニセ札作りの加担者一人ひとりを、ちゃんと描いています。しかも、破綻なく時代考証をし、その時代の気分を甦らせることまで成功している。
実力派の俳優をそろえ、しっとりとした絵柄で、ストーリー展開もテンポがいい。会話のシーンなど、次に話す人に前もってカメラを向けるのではなく、日常の会話と同じ視点で、しゃべり出した人にカメラを向けるといった、芸人監督ならではのライブ感を大事にした演出なんでしょうね。そのあたりも含め、ユニークな俳優木村祐一の
初監督ながらやっぱりダダ者でない才覚を感じます。
戦争は終わったけれど、図書室の書架に本はなく、村は貧しく、上からもたらされる民主主義が空白を埋めることはない。本作では、ニセ札を作ることが、そんな戦後をどう受け入れ、どう生きるかということと結びつけられています。
さらに、ニセ札を作ることは、疲弊した地域を活性化する事業を興すこと、自分の手で民主主義を実現することへとすり替わっていく。そのあたりは、カタチだけの民主主義に対する痛烈な風刺にもなっています。
かといって、社会派映画かというと、基本は王道コメディなんですよ。随所に笑いのポイントやサスペンス的なシーンが配置されて、声を出して笑ったりニヤリとさせられたり、ハラハラしたりと飽きさせません。