自動車保険金は出ないのがフツー (幻冬舎新書)
営利企業の本質がわかる本である。
いざ事故がおきたときに保険会社からどういう対応を受けるか、どうして保険会
社はそんな対応とるのか、そして私たちはどのようにして対処すべきかを教えてくれ
る本。
著者は交通事故訴訟のキャリアが長い弁護士。
被害者側に立った本書は実際の手に汗をにぎる事例がふんだんに紹介されており
読みやすい。
時速100km以上で走行中、前を走っていた車が急に車線変更した直後、
突如前方から飛んできたスペアタイヤが車にぶつかった事故では、
保険約款では「飛来中または落下中の物が衝突」した損傷をカバーするはずなの
に,道路に一度バウンドしたものはダメという屁理屈を言う保険会社。
それなのにその物が飛来してきたのか落下してきたのかそれともバウンドしてき
たのかどうやって区別するのかと問われて答えに窮する保険会社。
またバイク運転中に飛び出した犬のために急ブレーキをかけ転倒し炎上したバイ
クの下敷きになり結果両足切断となった契約者に対しては、わざとオイルを満タンにし、
タンクのキャップを緩め転倒時に炎上するようにしたと主張し、その犬が本当にいたと言うならつれて来いという保険会社。
このような保険会社と個人が自分で調べた生半可知識で交渉するのは難しい。
保険会社には経済力や蓄積してきた不払い、出し渋りの知識、ノウハウがあり、
さらに弁護士、税理士、医師、調査会社と言った各種専門家を総動員して保険金
を出し渋る。
しかも著者曰く、「損保は、被害者が善良でやさしい人であればあるほど
冷たくあしらおうとします。(p227)」
保険会社とのやり取りは畢竟交渉であり相手の強み弱み、
交渉の落としどころを知ることが重要だ。
よって事例紹介から保険会社の行動論理、そして対処マニュアルまで専門家が
一通り体系的に知識武装させてくれる本書の価値は高い。
読了後イメージ先行の保険会社のCMの見方が変わるのは私だけはないと思う。