南紫音デビュー・リサイタル(初回限定盤)(DVD付)
日本の音楽家も世界に通ずるセンスがここまで見事に育ったのかと,感心させられる素晴らしいデビュー盤.モーツァルトは音楽家にとって試金石となる楽曲だが,その無理のないのびやかな演奏は,楽曲を徹底的に堪能できた.フレージングの呼吸が長く,息の長い旋律を一気に弾きあげていくやり方は,かつてのグリュミオーなどの伝統を思わせる素晴らしいものだ.
プロコフィエフも見事な把握で,理解の視点が広く高いことを実感させられた.特に第三楽章の幻想的な美しさと終楽章の集中力ある構築力は見事.
シューマン・イザイも素晴らしいが,最後のブラームスはこの若き音楽家の将来性を大いに期待せずにいられない,とりわけ見事なでき.
また,本盤は伴奏の江口玲氏の最高のサポート抜きでは語れない.ソリストにとって,バランスを完全に把握しながら音楽の構造を支えられるピアノ伴奏と出会えることは,大変な幸運に違いない.
さらに,録音が優れていることも特筆したい.
なお,付録のDVDはつまらない.画質が悪く粗雑なもので,いくら特典付録とはいえ,これほど価値の低いDVDも珍しい.あくまでもCD本編にのみ期待して聞くべき素晴らしいCDである.
ブルーム
2枚目となった今作も,期待以上の素晴らしい内容に満足した。音楽の成り立ちを正確に理解し体現しながら,南紫音氏らしい落着きと輝きを兼ね備えたユニークな音も相変わらず魅力的である。
大げさな表情や誇張は一切なく,厳しく抑制のきいた確実な奏法で,造形も和声も正しく描きだされ,なんの心配もなく後期ロマン派の作品を堪能できた。R・シュトラウスやサン・サーンスのソナタをけれん味のない表現で自信を持って表現できるのは,相当な技量と見識がなければできないことで,これを二十歳の若者が成し遂げていることに敬意を感じた。自分の目で楽譜を研究し,確信を持って弾き切る素晴らしい演奏家であることが,この2作で十分理解できた。江口氏との相性も素晴らしく,今後もこの組み合わせて作品を残されることを期待している。
なお,本作も前作同様すぐれた録音で聴きやすい。
レコード芸術 2008年 04月号 [雑誌]
サンプルCDは、車で聞くのに適しています。
音質がいいですが、音楽に聞き入ることはできない状況なので、1局入っている必要もありません。
問題なのは、雑誌をちゃんと残しておかないと、この曲よかったので、CDを買おうと思ったときに、なんていう曲かがわからなくなることです。
レコード芸術は、このCDだけでも十分ものが取れる雑誌です。