英國戀物語エマ 1 初回限定版 [DVD]
19世紀ヴィクトリア朝時代の、霧の都ロンドンを舞台にしたアニメ。
まず、このアニメで圧巻なのは、その背景の町並みの描き込み。オープニングの冒頭に登場するイギリスの町並みを走る蒸気機関車や、2階建ての馬車を始め、エマが住み込みで働く、厳格な老婦人ケリー・ストウナー家の部屋の壁紙に至るまで、シックな時代を感じさせる色調で統一されて描き込まれています。
そしてメインに語られるのは、当時の階級制度の中で貴族に次ぐ地主階級であるジェントリ の、おっとりしたおぼっちゃんであるウィリアム・ジョーンズと、ケリー婦人宅の住み込みの家事使用人(メイド)のエマの、階級という超えがたい壁を超えた、恋。
また、登場する人物も、大学やパブリックスクール、グラマースクールが、男子教育機関としてのみ開放されていた当時の英国において、女子教育を一手に担っていた「ガヴァネス」とよばれる住み込みの女性家庭教師をしていたケリー婦人(現在引退)。ウィリアムに恋心を抱く、子爵の称号を持つキャンベル家の三女・エレノアなど、当時の時代風景を色濃く表す人物&風俗がそこかしこに登場し、作品世界を形作ってます。
また、アニメのキャラクターの造形も、原作者・森薫 さんのキャラクターの雰囲気をよく表現していて好感が持てます。
この良質なアニメが、DVD化の機会で、テレビ放映のなかった地域の視聴者まで、より広く見られることを切に望みます。
乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
この漫画の舞台は19世紀の中央アジア、前作エマ以上に現代の日本人からは遠い世界と言えるでしょう。
しかし馴染みの薄い文化、風俗を言葉ではなく徹底した描き込みで読ませてしまう凄みが森先生の作品にはあります。
もちろん漫画としての出来も逸品、結構な数の人物が登場しますがサブキャラ含めて魅力的な物語が展開されます。
少し気が早いですがエマ番外編のようなスピンオフが今から期待できそうです。
本筋の流れは王道ですが年上のお嫁さんと12歳の旦那様がどんな関係を育んでいくのか、
二人の家族(部族?氏族?)との関係も含めてこの先が楽しみです。
前作のファンはもちろん、ファンタジー好き(現実がモデルですがテイスト的に)や単純に凄い漫画を読みたい方に是非
MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日 【3枚組】 [DVD]
英国です。それ以外言いようがないDVDです。
100年前の貴族の暮らしを90日間、カメラが回っていないときも24時間やり通す。無茶苦茶な内容です。
応募してきた一般人が貴族のご主人様一家、執事、メイド頭、コック、下男等々に別れて生活します。
しつこいようですが100年前です。電気はありません。掃除はモップや雑巾です。
洗濯も手で洗います。料理も石炭などを燃やして作ります。
ご主人一家は慣れないお作法に四苦八苦です。
しかし、階下では召使い達がなれない仕事と自由時間がほとんどない生活、
そして、現代人には屈辱的とも思える扱いに、次第にキレ始めます。
偏屈なフランス人のコックに爆発寸前のメイド達。(メイドと言っても秋葉原ではありません)
銀食器を磨き、ものを運び、そしてクリスタルグラスを磨き、ご主人様にくっついていく、そんな繰り返しに「フットマン」たちもキレ始めます。
もちろん脱落者もでます。
その中で一人冷静な人がいます。初老でやせた「執事」。この人がすごい。英国人の「執事」はこうあるべきという姿を見せ付けます。
一体21世紀の人間かと思うほど、落ち着き、召使いたちを規律正しく動かし、お屋敷の中をまるで時計仕掛けのようにさばいていく姿は見ものです。
祖父が実際に執事だったそうですが、ものすごい姿勢です。この「エドガー執事」さんをみるだけでも、買う価値はあります。
英国人だなぁーというのが、見終わった私の感想です。こんなものは他の国では作れないでしょうし、つくったとしても話題にもならないでしょう。
さすが英国では、相当な話題になったようです。まあ、それにしても時代錯誤というか、頑固というか・・・「ジョン・ブル」とはよく言ったものです。
なお、これに出てくるお屋敷は正式には「カントリーハウス」です。「マナーハウス」と言うともっと小規模な木造の家になります。
日本で「カントリーハウス」というと、「ログハウス」を連想するので変えたのでしょうけれど。
孤独のグルメ 【新装版】
主人公の井之頭五郎(30代後半くらいか)が、仕事で立ち寄った街の食事処でとる食事の一こまを綴った、一話が8頁の連作短篇マンガ集。
全18話の文庫で出ていた一冊に、10年ぶりの新作「東京都内某病院のカレイの煮つけ」(8頁)と、谷口ジロー、川上弘美、久住昌之の三人の鼎談(10頁)を加えた新装版です。
その街、その場所のたたずまいと、腹の減った主人公が食べる食べ物とがいい感じで合わさって、心地よく、どこか懐かしい空気感を醸し出しているところ。「うん! これはうまい」「うん! これこれ!」と思いながら食べている主人公の、幸せな満足感に浸っている表情。そういうところが、とてもいい。『孤独のグルメ』ってタイトルも、この作品にふさわしいネーミング。
作画者、本作品のファンである小説家、原作者の三人の対談では、絵を描かれた谷口ジローのコメントが興味深かったですね。
<うまく描けそうだなって思ったのは、豆かんのときね。あの回のときに、豆かんを食べたときの表情というのかな、「うん、うまい!」っていう顔が描けたから。なんか描けそうな感じがしたんですよ、そのあとから>なんて語っているところとか、「なるほどなあ、そっかあ」と、頷かされました。
収録作品の中のマイ・ベストは、「第11話 東京都練馬区石神井公園のカレー丼とおでん」。不思議な懐かしい空気感を、特に強く感じた逸品。ラストの主人公の満ち足りた寝顔も、いいんだなあ。
大槍葦人ラフ画集総集編 『BETAGRAPH COLLECTION』【書籍】
過去に出版された設定・ラフ画集を1冊にまとめたもので
・BETAGRAPH2(白詰草話):p002〜
・SECRET GARDEN(Quartett、ロマネスク):p088〜
・BETAGRAPH about PERIOD(ピリオド):p174〜
・BETAGRAPH4(企画段階のフェアリースなど様々):p248〜
・BETAGRAPH5(シュガーコートなど):p324〜
の合計400ページになるかなり分厚い本です
収録されている絵は基本かなりラフいですが、キャラクターの設定やデザインの変遷、
同人時代の絵や没企画など様々な絵が収録されていてファンには嬉しい一冊。
「えっこれ18禁じゃなくて大丈夫なの?」な絵もちらほら、いやかなり沢山あります、
芸術なので大丈夫。
ゲーム会社リトルウィッチの作品は大体カバーされているのですが、残念なことに
19世紀のイギリスを舞台にしたメイドさん中心な作品「ロンド・リーフレット」は
このようなラフ・設定画集が出ていなかったのかぽつんと抜け落ちてしまっています。
それだけが惜しい本でした。